サンテ・ヴィジオーニ「BESTIE」

　GALLERY ETHERで、サンテ・ヴィジオーニによる個展、「BESTIE」が開催される。

　サンテ・ヴィジオーニは東京を拠点に活動するイタリア人アーティスト。フィレンツェ大学で工業技術を学ぶ。主に「バランス」というコンセプトを重視し、相反する力が生み出す葛藤を追求することにより、コントラストを利用してどのように内面を表現することができるかを探求している。2010年にイタリアのエレクトロパンクバンドであるDPGのメンバーとなり、ライブで観衆に囲まれながら絵を描いたことが根本的な発端となっている。その瞬間の自発性と即時性は、今も創造的なプロセスの生き生きとした部分でもある。スタジオでの活動のほか、ライブパフォーマンスやストリートへの介在、ブランドとのコラボレーションも行っている。

　本展は、人間の本性と内に潜む動物的本能との複雑な関係性を掘り下げる。ペアとなる絵画シリーズを通じて、忠誠心、知恵、勇気、知性といった人間的特質を動物に託し、比喩として描き出している。各作品のペアは、美徳と悪徳の繊細な均衡を示しており、いっぽうは肯定的な特質を表現し、もういっぽうはその裏に潜む暗く荒々しい側面を浮き彫りにする。

　本展タイトル「BESTIE」は、英語で「親友」を意味すると同時に、イタリア語では「獣」を意味する。この二重の意味を踏まえ、「解き放つ」と「飼い慣らす」のあいだに存在する葛藤を問いかける。動物象徴や「内なる悪魔」の比喩を手がかりに、バランスや自制を探りながら、原始的衝動とどのように折り合いをつけていくのかを映し出す。自身の内なる二面性や、未だ解き放たれたままの影と対峙することを促す。