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2025.3.8

佐々木類インタビュー。ガラスに閉じ込める「不可視の記憶」

透明なガラスに植物や日常の風景を封入し、目には見えない記憶の可視化を追求するアーティスト・佐々木類。その個展「不在の記憶」が、東京・西麻布のWALL_alternativeで開催された。これを機に、佐々木の制作背景に迫る。

聞き手・文=肥髙茉実 ポートレイト撮影=稲葉真

佐々木類
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水のような素材への憧れ

──佐々木さんは一貫してガラスの作品を制作されていますが、いつ頃からガラスという素材に惹かれていたのでしょうか?

 幼少期から水泳が好きで、大学ではスキューバダイビングもやっていたので、武蔵野美術大学に入る前から水のような素材に憧れがありました。私が進んだ武蔵美の工芸工業デザイン学科(以下、工デ)は、クラフト、インダストリアル、インテリアの3コースから構成されていて、工デでは、3つのコースに分かれる前に、3つのコース全体から色々選べます。私は、テキスタイル、インテリアデザイン(椅子の研究)、インダストリアルデザイン、ガラスなどを選びました。

 クラフトコースでは、2年生までに全部の素材を試したうえで自分にあったものを選ぶことができます。2年の後期からコースがわかれ、3年からガラスを専攻し、しばらくはクラフトとしてのガラスを学び、どのような人がどのようなシーンで使うかを設定したうえで機能やデザインを追求していました。

「不在の記憶」展示風景より
Photo by Keizo Kioku

──武蔵美のガラス専攻では、機能やデザインを重点的に学んだとのことですが、アートとしてのガラス作品につながっていくコンセプトの部分などは、どのタイミングから強化されていったのでしょうか。

 学部3年の後半までは器などを制作していましたが、卒業制作に取りかかるタイミングで、機能やデザインなどを考えず自由に大きなガラス作品をつくってみたらすごく楽しかったんです。これからはターゲットを設定したうえでのガラス作品ではなく、自己表現としてのガラス作品を勉強したいと思い、卒業後はロニ・ホーンなどの出身校でもあるアメリカのロードアイランド・スクール・オブ・デザイン修士課程のガラス科に進みました(Rhode Island School of Design、以下RISD)。

 日本の大学でガラスは工芸に基づいていることが多いのですが、RISDでは、クラフトとしてのガラス作家ではなく、現代アートの一線で活躍している様々な作家が講義や講評をしてくれます。コンセプチュアルにガラスを扱うということを学びたい私にとって、とても新鮮で魅力的な環境でした。