贋作は必ず著作権侵害になるの? 理論的に整理してみた

高知県立美術館が平成8年に購入したハインリヒ・カンペンドンク作とされる作品を贋作と発表し、大きな話題を集めている。これに限らず、美術の世界では贋作がつきものだ。ここでは贋作と著作権の関係を、弁護士・木村剛大が論理的に解説する。

文=木村剛大

ハインリヒ・カンペンドンク《少女と白鳥》(1919)とされていた作品
出典=読売新聞オンライン(https://www.yomiuri.co.jp/national/20250314-OYT1T50234/)
Signing my name to it was wrong but other than that I don’t care.(僕の名前をペインティングに署名することは正しくない。でもそれ以外については気にしないよ。)──アンディ・ウォーホル

出典:Kenneth Goldsmith, I’ll Be Your Mirror:The Selected Andy Warhol Interviews, Da Capo Press, 2004, p.391 (和訳は筆者による)

 アンディ・ウォーホルに限らず、アーティストにとってもっとも望まないことが贋作の流通だろう。

 贋作については、拙稿「プロでも見抜けない!?買った作品が贋作だったらいったいどうなるの?」ウェブ版「美術手帖」(2021年11月8日)でも取り上げた。美術業界にとって消えることのない重大なテーマである。

 今回は、贋作について、そもそもどのような権利を侵害するのか? どのような罪になるのか? といった基本的な事項を法的観点から整理して紹介する。