伊勢に「EXPERIENCE ISE MIYAMACHI HOTEL」が誕生。「泊まれるギャラリー」としてアートと旅をつなぐ新拠点に

　三重県伊勢市・旧伊勢街道沿いに、新たな文化拠点となる宿泊施設「EXPERIENCE ISE MIYAMACHI HOTEL」が2025年11月9日にオープンした。伊勢神宮・外宮から徒歩10分という歴史と文化の集積地・宮町に位置し、かつて地域に親しまれた旧歯科医院をリノベーションした建物が、アートと滞在できる「ライフスタイルホテル」として再生されている。

　本ホテルの最大の特徴は、客室10室と共用空間を「泊まれるギャラリー」として位置づけた点だ。本ホテルでは、この10室各部屋にふさわしい作品をつくるアーティストを募集するプロジェクト「SHOWCASE YOUR ART AT OUR HOTEL」を実施。全国から公募・選出された15名のアーティストによる作品が各部屋に展示され、宿泊者は滞在しながら異なる作家の世界に浸るユニークな体験ができる。また、1階「GALERIE」では約2週間ごとにアーティストが入れ替わる個展が開催され、すべて入場無料。地元住民や観光客も気軽に立ち寄れる開かれたスペースとして、地域の文化発信を担う。

　運営は、地域に根ざした住宅づくりを行ってきた株式会社ビーディホーム（BdHOME）。「暮らしと地域づくり」の視点を活かし、建物そのものにも「冬至の光と影」をモチーフにした空間デザインを導入。再生と旅の物語を感じられる設えとした。ホテルを単なる滞在施設ではなく、アートを中心とした多様な体験を通じて、宮町・伊勢を再訪したくなる旅へとつなげていくことをめざす。

 「御師と旅人」と題した自社の地域紹介サイトでは、宮町周辺の文化や飲食店を発信。ホテルでは夕食提供を行わないが、客室のインフォメーションTVやフロントで同サイトを案内し、旅の楽しみである「地元の人とのふれあい」につなげる仕組みを整えている。伊勢ならではの食や文化に歩いて触れられる環境を活かし、ホテルが地域活性のハブとなることも期待される。

　朝食には、地元の野菜、米、味噌、パン、鰹節など、伊勢の自然と文化を象徴する素材を用いた料理を提供。アーティストの個展やイベントを通じて地域と交流する機会も設けられ、宿泊者・来訪者双方にひらかれた文化の場として機能することを目指す。

　アート、地域文化、そして旅の体験が重なり合う新しい「宮町の拠点」として、今後どのような創造的な循環が生まれていくのか注目したい。