アリ・バユアジ「海の音」

　ミヅマアートギャラリーで、アリ・バユアジの日本初個展「海の音」が開催される。

　バユアジは1975年、インドネシア・モジョケルト生まれ。モントリオールとバリ島を拠点に活動しており、海岸で拾い集めた素材や既製品を巧みに取り入れたインスタレーション作品で知られ、その土地にまつわる物語や歴史的記憶、そして環境問題に対して独自のアプローチで作品を展開している。

　2020年、バユアジはバリ島サヌール近くのマングローブの根に絡まったプラスチック製のロープを発見したことをきっかけに、地域密着型のアートプロジェクト「Weaving the Ocean」を立ち上げた。彼はバリに住む職人たちと協力し、廃棄されたプラスチックを鮮やかな色の糸へと生まれ変わらせ、繊細な織物として昇華。このプロジェクトは、持続可能な収入源や教育の場として発展し、現在では15名以上の人々が複数の地域で活動に参加している。また、釜山、シドニー、モントリオールなどでワークショップを開催し、プラスチック廃材をアートへと再生する手法を広めている。

　本展は、幼少期から日本文化に影響を受けてきたバユアジにとって特別な意味を持つ。「亡き父は、日本の芸術について教えてくれました。『人生において大切なことは、誠実さと思いやりを持ち、その課程の一歩一歩を愛おしむことだ』という父の教えは、日本の芸術の創造過程にも通じるものだと思う」とバユアジは語っている。

　また、10歳の頃に盆栽に触れた経験では、忍耐強く丁寧に手を加えることで生まれる洗練された美しさへの敬意が培われたと言う。バユアジは今回の展覧会について「私の作品が見た目の美しさだけでなく、職人の精神や素材への敬意といった面からも、日本文化と深く結びついていることを感じてほしい」と願っている。

　本展覧会では、海辺に打ち捨てられたプラスチック廃材を用いた、大きな織物作品や、拾い集めた素材を用いた彫刻作品、ミクストメディア・インスタレーション作品など、多彩な表現を紹介。自然、伝統、そしてサステナビリティが交差する、バユアジの力強い世界観を体感することができる。