2025.3.7

「ラーメンどんぶり展」(21_21 DESIGN SIGHT)開幕レポート。愛すべき「ラーメン」を通じて焼き物の広がりと奥行きに目を向ける

21_21 DESIGN SIGHTで「ラーメンどんぶり展」がスタート。美濃焼のラーメンどんぶりを中心に、アーティストやデザイナーが手がけたオリジナル作品や、ラーメンの文化と歴史を深掘りする展示が行われている。会期は3月7日〜6月15日。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より
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 東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで、企画展「ラーメンどんぶり展」がスタートした。会期は6月15日まで。展覧会ディレクターは橋本麻里、佐藤卓。

 同展は、このふたりが2012年から取り組んできた美濃焼に関するプロジェクトのひとつ「美濃のラーメンどんぶり展」をもととするもの。美濃焼は、日本有数の窯業地である岐阜県美濃市で生産される陶磁器であり、じつは日本で使用されているラーメンどんぶりの9割が美濃焼の伝統技法を用いてつくられているという。

 会場には、日本の食文化のなかで愛されるとともにサブカルチャー的な視点でも語られる「ラーメン」を、多角的な視点から深掘りするコンテンツが4つのパートで提示されている。

 まず展示室ロビーでは、イントロダクションとして「ラーメン」の歴史と現在を、グラフィックやマンガの一コマを用いて紹介。また、ラーメン店を想起させるような音のインスタレーションも設置されており、展覧会に足を運んだにもかかわらず食欲が刺激されてしまう。

展示風景より

 ギャラリー1では、様々な要素から成り立つ「ラーメン」という概念を徹底的に解剖した展示のほか、実際のラーメン店で使用されているどんぶりから、厳選された250点が一堂に並べられている。店ごとのコンセプトが表れた、オリジナリティあふれるデザインにも注目したい。

展示風景より
展示風景より
展示風景より

 ギャラリー2の前半では、これまでのプロジェクトを発展させ、アーティストやデザイナー、芸能人らによる全40点(新作10点)のラーメンどんぶりやレンゲが屋台のような什器にずらりと並ぶ。また、建築家・デザイナー3組による「ラーメン屋台」のデザインにもユニークな視点が見受けられる。

展示風景より
展示風景より
展示風景より

 後半では、土や釉薬をブレンドする高い伝統技術が根付く美濃ならではの、多様な陶磁器の在り方について紹介している。ラーメンどんぶりをはじめとする生活用品からアート作品に至るまで、その豊かな広がりを俯瞰することができるだろう。

展示風景より
展示風景より

 ここまでは、ラーメンどんぶりを通じて美濃焼の伝統技法について知ることができるものであった。そんな美濃では、一度つくると土に戻すことができない不可逆な性質を持つ美濃焼を循環させるための試みが行われているという。その方法とサステナブルなかたちで新たに制作された焼き物が紹介されている。

展示風景より
展示風景より

 ギャラリー外では、ラーメンどんぶりのデザインに挑戦することができるワークショップ「丼自慢」も実施されているためぜひ参加してみてほしい。

 多くの人に愛される「ラーメン」を通じて、美濃焼を身近に感じられるとともに、窯業の広がりと奥行きを知るきっかけとなる展覧会となっている。

展示風景より
展示風景より

 なお、アーティストらによる「ラーメンどんぶり」は、21_21 DESIGN SIGHT内グッズショップで販売が予定されている。詳細は公式ウェブサイトをチェックしてほしい。