特別展「桜 さくら SAKURA 2025」(山種美術館)レポート。美術館で一足早いお花見を
東京・広尾の山種美術館で、特別展「桜 さくら SAKURA 2025 ―美術館でお花見!―」が開催中だ。

春の訪れをいち早く感じさせる展覧会が、東京・広尾の山種美術館で始まった。特別展「桜 さくら SAKURA 2025 ―美術館でお花見!―」だ。
桜の美しさと儚さは古来から日本人を魅了し、芸術の世界において数々の作品の主題となってきた。本展は、そんな桜に魅せられた日本画家たちが生み出した、桜の名品51点を展示するものだ。

展示は「桜とともに」「名所の桜」「桜を描く」「詩歌・物語の桜」「夜桜に魅せられて」の5章で構成されている。
展示冒頭を飾る第1章で、本展のハイライトのひとつと出会う。それが、桜を愛でる女性を色鮮やかに描いた松岡映丘の《春光春衣》(1917)だ。《源氏物語絵巻》や《平家納経》などを参考にした本作は、金銀を多用したやまと絵の描法とともに、色彩や画面構成には近代的な要素が取り入れられている。同館顧問で美術史家・明治学院大学教授の山下裕二は松岡を「最後のやまと絵師」としており、本作は「将来の重要文化財候補」と高く評価している。

また1章では、清らかな水が流れる渓谷に咲く山桜を表した川合玉堂の《春風春水》(1940)にも注目したい。渡し船は、玉堂が好んだモチーフであり、本作にも春の山間部を舞台に、農婦を乗せた渡し船がゆったりと川を渡る様子が描かれている。
