EXHIBITIONS

MOT Plus

ハン・ネフケンス財団との共同プロジェクト シャハナ・ラジャニ

2025.04.29 - 06.29

シャハナ・ラジャニ 《回復のための四つの行為》より(制作:ハン・ネフケンス財団)

 東京都現代美術館で「ハン・ネフケンス財団との共同プロジェクト シャハナ・ラジャニ」が開催されている。

 同館は今年、従来の展覧会の形式にとどまらない実験的なプロジェクトや、ほかの組織との共同事業を展開する新たな企画「MOT Plusプロジェクト」をスタート。本展は、その一環の展覧会だ。

  ハン・ネフケンス財団は、2009年の設立以来、バルセロナを拠点に世界各地の美術組織と連携し、映像を表現媒体とするアーティストの制作支援を行っている。同財団は2023年、東京都現代美術館とプラメヤ・アート・ファウンデーション(インド)、ノッティンガム・コンテンポラリー(英国)、イシャラ・アート・ファウンデーション(アラブ首長国連邦)、アントワープ現代美術館(ベルギー)およびPara Site(香港)と連携し、「南アジア・ビデオアート・プロダクション・アワード」を設立。このアワードは、受賞者となる若手アーティストに、新作の制作費と展示の機会を提供し、育成につなげることを目的としている。

 このたび、南アジア地域(バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカ、アフガニスタン)からノミネートされた候補者から、同賞の受賞者として、パキスタンを拠点に活動するシャハナ・ラジャニが選ばれた。ラジャニは、開発、軍事化、環境破壊を焦点に自国の風景とインフラを作品で取り上げ、その表象を探求。コミュニティと協働して行う調査に根ざした領域横断的なラジャニの実践は、環境破壊に対する抵抗の歴史に関わるものでもある。また、ザフラ・マルカニとともに、土地と水を巡る抵抗運動をもとにした急進的な教育実践を探求する実験的プロジェクト「カラチ・ラジャミア」を共同設立した。

 本展では、ラジャニによる新作映像インスタレーション《回復のための四つの行為》を展示。本作は、インダス・デルタにおけるダム建設が引き起こした環境破壊により、カラチへの移住を余儀なくされた漁師の一家が、消えゆく故郷を絵に描きとめる姿を追った映像をベースとしている。ラジャニは、彼らが生活していたかつての入江や聖者廟の風景を壁画に描く行為を、愛する人の庇護と回復を祈願して描くイスラームの護符(タリスマン)の伝統文化にもつなげながら、戻ることのできない世界の姿を呼び起こす抵抗と帰属の儀式として描き出している。