EXHIBITIONS

小林椋 「且ん凡ん目ん、あと皿」

2025.08.08 - 09.08
 GASBON METABOLISMで、小林椋の個展「且ん凡ん目ん、あと皿(しょんぼんめん、あとぼん)」が開催される。本展では、2014年から25年までに制作された作品群の中から、「目的なき機械たち」と言えるような作品を中心に展示する。これらの作品は、「装置」「機械」「彫刻」といった言葉をもって語られながらも、どこか朴訥な温かみを感じさせる「オブジェ」として小林の作品を特徴づけてきたものである。一見すると生産的な活動をしているように見えるこれらのオブジェたちは、実態として明確な目的や機能を持っておらず、その動きもまた何を目指しているのか判然としない。うねる稜線や歪んだ楕円、緩やかな台座といった造形要素もまた、何かに由来するように見えるがその出自は明言されていない。

 それらは、かつて展覧会という時間のなかで意味づけられ、あるいは無意味なものとして放置された「箱」たちだ。本展では、それらの「箱」を改めて空間に持ち出し、「無名のもの」として意味の枠組みから一度引き剥がし、無作為に並べてみることを試みる。そこには、作家自身が無意識に繰り返してきた「手癖」や、反復のなかで少しずつ変化してきた形態の差異が浮かび上がる。

 展示空間では、オブジェたちが自律的に動き、ときに音と映像を交えて互いに応答し合う、まるで構造同士が呼吸しているかのような環境が出現する。そこにはもはや中心となる主役は存在せず、訪れる人は、その構造の連鎖する環境へ参画し、観察者であり、同時に構造の一部となる。 その鑑賞体験は、単なる鑑賞に留まらず、体験と参与と発見の循環をもたらすものだ。