死後くん「囲炉裏に囲まれて」

　亀戸アートセンターで、イラストレーターの死後くんによる個展「囲炉裏に囲まれて」が開催される。

　死後くんは、幼少期の落書きや友人との合作漫画を通じて物語制作に興味を持つ。少年漫画やギャグ漫画への憧れを抱きながら、大学時代には映像制作にも関心を広げる。自主映画やミュージックビデオの制作現場を経験したのち、絵本制作のワークショップやSNSでの漫画発表を通して、自身の表現を少しずつかたちにしていった。頭のなかで巡らせた空想を、予想外の角度から飄々とした線やユーモラスな物語に変換し、ふと心に残る世界を描き出す。登場するキャラクターたちは、愛らしさのなかに一筋縄ではいかない独特さを秘めており、掴みどころのない表情や仕草は、どこか哀愁を漂わせ、観る人を自然とその世界へ引き込む。

　本展のタイトルは「囲炉裏を囲む」ではなく「囲炉裏に囲まれて」となっており、どこか禅問答のようである。一見馴染み深いようで、実際にはあまり身近ではない「概念としての囲炉裏」を、どのように描き出すのか注目してみてほしい。