• HOME
  • MAGAZINE
  • INTERVIEW
  • 「変化し続ける映画」で創造性を問う。ブライアン・イーノの哲…
2025.7.3

「変化し続ける映画」で創造性を問う。ブライアン・イーノの哲学を映すジェネレーティブ・ドキュメンタリー映画『Eno』誕生の舞台裏

アンビエント・ミュージックのパイオニアとして知られ、デヴィッド・ボウイとのコラボレーションでも多大な影響を与えてきたブライアン・イーノ。その創造性と哲学を映し出すジェネレーティブ・ドキュメンタリー映画『Eno』が、7月11日より一般公開される。自動生成プラットフォームを用いて、毎回異なるバージョンが上映されるこの映画には、映画という形式そのものを更新しようとする野心と、イーノの思想への真摯なまなざしが込められている。監督ギャリー・ハストウィットへのインタビューを通じて、その舞台裏と創作哲学に迫る。

聞き手・文=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

ギャリー・ハストウィット
前へ
次へ

 アンビエント・ミュージックの先駆者にして、デヴィッド・ボウイやU2らとの革新的なコラボレーションでも知られるブライアン・イーノ。その創作は音楽にとどまらず、アートや映像、さらには哲学的思考にまで広がっている。そんな彼の足跡をたどりながら、創造性とは何か、芸術とは何かを改めて問い直すジェネレーティブ・ドキュメンタリー映画『Eno』が誕生した。

 本作が画期的なのは、イーノの人生と思想を描くだけでなく、その構造そのものが生成的であるという点だ。上映されるたびに異なる映像が現れ、同じバージョンは二度と存在しない。編集作業はアルゴリズムによって行われ、観客が目にするのは、無数に存在する可能性のうちのたったひとつ。まるで意識の流れをたどるかのように、断片的な映像がリアルタイムで再構成されていくその様子は、まさに「流動する映画」と言えるだろう。

 監督を務めたギャリー・ハストウィットは、本作を「創造性についての映画」だと語る。インタビューを通じて見えてきたのは、映画という形式の限界を超えようとする野心と、イーノという稀有なアーティストの哲学的かつ実践的な創造のプロセスを映し出す誠実なまなざしだった。

 映画『Eno』は7月11日より一般公開予定。本稿では、その構造的革新性と、ブライアン・イーノという人物の深層に迫るインタビューをお届けする。

『Eno』のポスター