2025.3.8

WHAT MUSEUMの建築倉庫がリニューアルオープン。模型を通じて建築文化を体験できる施設へ

東京・天王洲で寺田倉庫が運営するWHAT MUSEUM内にある「建築倉庫」が、新たに体験型スペースを増設してリニューアル。その内容をレポートする。

文=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)

建築倉庫の新スペース Photo by Katsuhiro Aoki
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 東京・天王洲で寺田倉庫が運営するWHAT MUSEUM内にある「建築倉庫」が、新たに体験型スペースを増設。リニューアルオープンした。

 建築倉庫は2016年にオープン。800点以上の建築模型を保管・展示してきた。建築模型は建築家の設計や思考のプロセスを伝える重要な資料だが、保管場所の問題も多く、失われてしまうことも多々あった。建築倉庫ではこうした建築模型を保管するとともに、広く閲覧できる施設として運営されてきた。

建築倉庫の建築模型展示 Photo by Katsuhiro Aoki

 今回のリニューアルにあたって、建築倉庫は新たな体験型の常設スペースを設置。ここでは建築模型の基本を学べるほか、子供、中高生、大人を対象としたワークショップも実施し、建築文化に親しむことができる。

 まず、エレベーターホールと一体になっているエントランスには、新たに滋賀県立大学陶器浩一研究室の設計による、釘を使わずに制作した竹の素材と構造を活かした作品《三灯小径》が展示され、構造への興味を換起するようになった。

エントランス「三灯小径」 設計=滋賀県立大学陶器浩一研究室 制作=滋賀県立大学陶器浩一研究室+ワークショップ参加者+建築倉庫スタッフ Photo by Katsuhiro Aoki

 従来からの模型を保管するスペースには、数々の建築模型が並ぶ。例えば、美術に関係するものであれば、隈研吾による石の美術館、上海工業博物館、マルセイユ現代美術センター、あるいはSANDWICHによる《洸庭》などの模型が現在展示されている。加えて、実際には建築されなかった建築模型も並んでおり、その建築のイメージを模型だからこその実感を持ってとらえることができる。

建築倉庫の建築模型展示 Photo by Katsuhiro Aoki

 なお、今回のリニューアルにあたっては、一部の模型の建築図面を公式アプリにアクセスすることで閲覧できるようになった。図面と模型を見比べながらその構造をより仔細に把握できるはずだ。

建築倉庫の建築模型展示 Photo by Katsuhiro Aoki

 新たに増設されたスペースでは、小学生から大人まで、幅広い世代が建築模型を通して、建築の構造や思想にふれることができる場所となっている。

建築倉庫の新スペース Photo by Katsuhiro Aoki

 桃山時代には存在したとされている、紙に平面・展開図・天井面・屋根を描いて切り抜き、床に接する部分を糊付けした「起こし絵図」。これを組み立てる「起こし絵図を組み立てよう!」では、紙のパーツを組み合わせながら、藤村庸軒好みの澱看席の起し絵図を制作できる。

「起こし絵図を組み立てよう!」 起こし絵図複製協力=三井嶺建築設計事務所 撮影=編集部

 多面体の幾何学の面白さを体感する中高生向けワークショップ「多面体と構造」では、からだを動かしながら木材と金物を使って大きな多面体を組み立てることができるもの。構造やものづくりの楽しさについて学べる。

「多面体と構造」 撮影=編集部

 さらに、5月から全4回で行われる「模型で考える土地から間取りまで」は、家づくりに必要な視点や知識を、模型を使いながら体得するワークショップだ。土地の長所を生かした住宅配置や、窓の開け方、日照の考えから、間取りから家具のレイアウトまで、実際に模型を動かしながら掘り下げる。

「模型で考える土地から間取りまで」 撮影=編集部

 今回のリニューアルにより、これらワークショップにおける実践と、倉庫に保管された建築模型とを行き来することで、建築家の思考や工夫をよりわかりやすく知ることができるようになった。近年、広く興味を集める建築を、より五感でとらえることができる施設になったといえるだろう。