それに加えて会場では、制作の背景にあるリサーチの過程やインスピレーション源など、資料の展示も行います。現在、金沢21世紀美術館で開催中の個展「Living road, Living space /生きている道、生きるための場所」に同名作を出品していますが、今回の出品作はその東京バージョンという位置づけとなります。
播本和宜(以下、播本) 「アート・インキュベーション・プログラム」は、アーティストが制作することをサポートし、そのプロセスやアイデアを東京に暮らす人たちと共有していくことだと聞きました。表現を成果物だけではなく、制作のプロセスを重要視するという考えがあります。これを尊重したいと考えている機関は多いですが、現実は理想の域を抜けていません。CCBTは実際にそれを実現しようとしているのが面白いと思います。プログラム初年度となる2022年度のフェローとして「rode work ver. under city」という作品を制作しましたが、テクノロジー面でのサポートの手厚さを感じられましたし、渋谷にメディアアート関連のスペースができるということに対する期待感もありました。
西広太志(以下、西広) SIDE COREだけでは難しい制作ができたと思います。CCBTは東京都という公の立場から話を通してくれるので、いち個人ではアクセスしづらい場所を撮影地として使いたいときの交渉や、制作環境の調整などに力を発揮してくれました。行政組織や民間企業とアーティストが直接話すと、うまくいくときもあるし、話が通じないときもある。交渉に関して、僕らが自分自身でやらないと、こういう結果が出るのかと驚きました。色々な機関と交渉していく中で、最終的には「担当者が興味持ってくれるかどうか」が鍵ということを知ることができました。
SIDE CORE「rode work ver. under city」(2023年、目黒観測井横 空地) photo:Tada(YUKAI)
SIDE CORE「rode work ver. under city」(2023年、目黒観測井横 空地) photo:Tada(YUKAI)
松下 ニューヨークの80年代のアートをみても、NPOが運営しているPublic Art Fundが担った部分がじつはすごく大きい。デイヴィッド・ハモンズもゲリラ・ガールズも、ジェニー・ホルツァーもキース・ヘリングも、ファンドを通して制作をしていますし、彼らの代表作の多くもプロジェクトで制作されたものだったりします。Public Art FundはNPOが運営していますが、ニューヨーク市とかなり深く連携しています。もともと、市の建設予算の1パーセントをパブリックアートに充てる完全な公費プログラムがありましたが、ただ広場にオブジェを置くという形式にとどまらず、それを超える実践のためにPublic Art Fundが一役買ったという感じでしょうか。企画の内部にもアーティストが参加していて、例えば「メッセージズ・トゥ・ザ・パブリック」という電光掲示板にアーティストの作品を写すプロジェクトも、ジェーン・ディックソンというアーティストの提案で始まりました。このように、個人とNPO、企業と行政など異なるレイヤーが同時に関わるから実現できることがあるのだと思います。