EXHIBITIONS

伊藤義彦「フロッタージュー暗室讃歌ー」

2025.03.19 - 04.30

©Yoshihiko Ito, courtesy of PGI

 PGIで、伊藤義彦による個展「フロッタージュー暗室讃歌ー」が開催されている。

 伊藤義彦は1951年山形県生まれ。1977年に東京綜合写真専門学校を卒業。35ミリ版ハーフサイズのカメラで撮影したフィルム1本分すべてを一枚の印画紙の上に焼き付けた独特なコンタクトプリント作品を発表。撮影したそれぞれのコマが全体のなかで占める位置を綿密に計算、想定し、一枚のコンタクトシートがひとつの絵をつくり出す作品や、作者と対象のあいだに存在する、目に見えない時間や意識の流れをひとつの画面の中に表現した。また、2000年頃からはこれまでの手法から離れ、プリントを裂き、イメージを継ぎあわせ再構築することにより、時間を凝縮させた独特の世界観を表現した「パトローネ」シリーズを発表してきた。

「パトローネ」シリーズで使用していた印画紙が生産中止となり、写真作品の制作が困難になった伊藤は、新しい表現の道を模索する。使うことのなくなったフィルムを眺め、作家にとって「様々なイメージをかきたてる存在」であるフィルムから様々なことに思いを巡らせた。そして、写真作品制作時にも資料として絵コンテやスケッチに慣れ親しんでいたことから、そのフィルムをテーマにフロッタージュ作品の制作を開始。2015年頃からフロッタージュ作品の制作を始めた伊藤は、これまでに400点近くの作品を生み出してきた。

 8×10(エイトバイテン)のフィルムをベースに描いた前作《フロッタージュ-フィルムの中-》では、35ミリフィルムを題材に伊藤が写真家としてのキャリアのなかで表現し続けてきた意識や時間の流れといった、写真に向きあう思考を表現した初期シリーズとなっていた。本展では、2020年から2024年にかけて制作された作品から「暗室讃歌」と題し、緻密な手作業によって暗室への思いを形にしたオマージュ作品が展示。