2025.7.31

ルーシー・リーの10年ぶりの大回顧展が国立工芸館で開催

石川・金沢にある国立工芸館で、ルーシー・リーの10年ぶりの大回顧展が開催される。会期は9月9日〜11月24日。

移転開館5周年記念 ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ― チラシ
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 石川・金沢にある国立工芸館で、20世紀を代表するイギリスの陶芸家・ルーシー・リーの10年ぶりの大回顧展が開催される。会期は9月9日〜11月24日。

 ルーシー・リー(1902〜1995)は、オーストリア・ウィーン生まれの陶芸家。ウィーン工業美術学校で轆轤(ろくろ)に出会い魅了され、陶芸の道へ進む。作家としての地位を確立しながらも、1938年に亡命を余儀なくされたのち、作陶の場をイギリス・ロンドンへ移した。日本では、1989年の草月会館での展覧会で紹介されてから人気を博し、以降ファッション誌やライフスタイル誌でも定期的に取り上げられている。

 10年ぶりの大回顧展となる本展は、国立工芸館に寄託された井内コレクションの作品が中心となり紹介される。ルーシーが出会った人、もの、場所、そして時代背景を交えながら、その作品を全4章で紐解く構成となる。

 第1章は「ウィーンに生まれて」。1902年に生まれたルーシーは、ウィーン工芸美術学校に入学し、ミヒャエル・ポヴォルニーに陶芸を学ぶ。彼女が制作を始めた20世紀初頭のウィーンでは、日用品を通して高い美意識を表現したウィーン工房のアーティストたちが活躍していた。本章では、ウィーン工房の創設者のひとりであるヨーゼフ・ホフマンをはじめ、同時代に活躍した作家の作品や、ルーシーの初期作品が紹介される。

ルーシー・リー カップ 1926年頃 個人蔵 撮影:野村 知也

 第2章「ロンドンでの出会い」では、1938年にルーシーがナチス迫害から逃げるために渡ったロンドンで制作された作品が展覧される。ルーシーはそこで、イギリス陶芸界の中心的役割を担っていたバーナード・リーチ、ボタン制作のため工房に参加した彫刻家志望の青年ハンス・コパーらに出会う。ルーシーのロンドン時代の作品は、彼らからの影響が多く見受けられるものとなっている。

ルーシー・リー 黄釉鉢 1958年頃 井内コレクション (国立工芸館寄託) 撮影:品野 塁

 第3章は「東洋との出会い」。ルーシーが渡英した当時、バーナード・リーチをリーダーとするスタジオ・ポタリーの陶芸家たちは東洋陶磁に範を求めていた。また、1952年に開催されたダーティントン国際工芸会議では、ルーシーは濱田庄司らと交友を深め、のちに一緒に個展を開催する仲となる。本章では、リーチや濱田らの作品とともに、ルーシーの東洋との関わりが紹介される。

ルーシー・リー 白釉鎬文花瓶 1976年頃 国立工芸館蔵 撮影:品野 塁

 第4章「自らのスタイルへー陶芸家ルーシー・リー」では、1970年以降に制作された鉢と花器が展覧される。小さな高台やすっきりとしたライン、マンガン釉や掻き落としなど、現在彼女の作風として認識されている様式を確立した後の作品を見ることができる。

ルーシー・リー ピンク象嵌小鉢 1975-79年頃 国立工芸館蔵 撮影:アローアートワークス

 なお本展の開催を記念して、出川哲朗(大阪市立東洋陶磁美術館名誉館長)と本展を監修した岩井美恵子(国立工芸館工芸課長)によるトークイベント「日本におけるルーシー・リーの受容」が開催される。