EXHIBITIONS

弓指寛治「4年2組」

2025.06.28 - 07.23

弓指寛治 こおりおに 840 × 594 × 30 mm Photo:DUSTBUNNY

 銀座 蔦屋書店で、弓指寛治による個展「4年2組」が開催されている。

 弓指寛治はこれまで、岡本太郎現代芸術賞敏子賞(2018)、あいちトリエンナーレ2019への出展、絹谷幸二芸術賞(2025)などで評価され、注目を集めてきた。直近では国立西洋美術館の特別展「ここは未来のアーティストたちが眠る場所となりえてきたのか?」(2024)で、山谷のドヤと上野のホームレスを主題とした作品を発表。絵筆を手掛かりに日常へ分け入ることで、社会と歴史をほどき、独自の視点で編み直す姿勢が多くの共感を呼んだ。

 本展で公開されているのは、弓指が現在取り組んでいるプロジェクトの「進行形」の様子である。学校連携プログラム「アーティストが学校にやってきた」(*)を通じて、弓指が昭島市立光華小学校4年2組のクラスメイトとして通学しながら制作した新作群を発表している。

「子供と戦争」について考えることを企図されて始まったプログラムに対し、弓指は深く子供たちと関わるため、自ら児童の「クラスメイト」になることを提案した。半年前から、朝の登校から下校の時間まで、授業時間だけでなく、休み時間の鬼ごっこも一緒にし、10歳の小学生と同じ目線に立つ日々を過ごしている。これまでには児童とともに防空壕跡などを巡るなど、過去と現在を重ねる対話を続けてきた。地域に潜む記憶や遺構を子供の日常目線から掘り起こすことで、この経験をともにオルタナティブな物語へと紡いでいこうとしている。

 本展では、こうした体験を礎に生まれた作品群を立体的に展示。それぞれの作品には、弓指が実際に会い、ともに過ごした人々から得た学びや、そのときの感情が織り込まれている。教科書や記念碑とは異なる、アートならではの言語で紡ぎ出される「もうひとつの歴史の継承」を見る。

*──学校連携プログラム「アーティストが学校にやってきた」は、東京アートポイント計画「多摩の未来の地勢図」の一環として実施(主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京、特定非営利活動法人アートフル・アクション)。