EXHIBITIONS

Selection ヨーガン・アクセルバル、大垣美穂子、水戸部七絵

2025.07.05 - 08.09

水戸部七絵 日の出の風景画 2025 Oil wax pigment on canvas 32 × 33 × 9 cm
©Nanae Mitobe / courtesy of the artist and KEN NAKAHASHI, Photo by Yuya Saito

 KEN NAKAHASHIで、大垣美穂子、水戸部七絵、ヨーガン・アクセルバルによる展覧会「Selection」が開催されている。

 本展は、夕暮れから夜にかけての時間帯にのみ開廊し、変化する光の状態のなかで作品を体験することができる。

 大垣美穂子は1973年富山県生まれ。現在、茨城県在住。愛知県立芸術大学を卒業後、1996年よりドイツ国立デュッセルドルフ・クンストアカデミーに留学。16年間にわたりドイツで活動したのち、2010年に帰国。光と身体、記憶をめぐるインスタレーションを国内外で展開してきた。作品《Milky Way》は、人体をモチーフとしたFRP製の立体に無数の小さな穴をあけ、そこから光を放つ立体インスタレーションだ。13年に大垣自身がくも膜下出血を発症したことを契機に、「生死」や「老い」というテーマに向きあうようになった。鑑賞体験は、観者の身体感覚や内面と呼応するように始まり、個人的な記憶や感情の領域を超え、人間全体の意識へと接続されていくような感覚へと展開していく。

 水戸部七絵は神奈川県出身。東京藝術大学大学院を修了後、ウィーン美術アカデミーで学び、現在は日本とオーストリアを拠点に活動。油絵具を手で掴むように厚く塗り重ねる立体的な表現が特徴で、社会や音楽、資本主義などのテーマを取り入れたシリーズを多数展開している。水戸部は、本展のために制作した新作ペインティングを発表。絵具の物質性、色、時間が重なりあいながら結晶化するような画面は、観者の感覚に訴えかけ、夏の宵に浮かび上がる輝きを放つ。

 ヨーガン・アクセルバルは1972年スウェーデン生まれ。15年間のニューヨークでの活動を経て、2011年より東京を拠点に活動。近年では、国内外での展覧会や他分野とのコラボレーションを通じて、表現の幅を広げてきた。孤独、記憶、歴史、そして現在の人間の精神的・社会的な状態(あるいはこの世界)との関係に焦点をあてた作品を通じて、写真・詩・音が交差する独自の表現を展開している。本展でアクセルバルは、初期の「Go to become」シリーズより1点を展示。詩人・高橋睦郎の詩と重なる本作は、言葉とイメージが織りなす静謐な世界をつくり出す。当初は印画紙にプリントされた作品として発表されたが、今回は近年アクセルバルが取り組む和紙プリントによる新たなヴァージョンで展示されている。