EXHIBITIONS

菅亮平展 The Long Wait

町立久万美術館
2025.09.13 - 12.07
 町立久万美術館で「菅亮平展 The Long Wait」が開催される。

 菅亮平は愛媛県生まれの美術作家であり、現代アートの領域において「空虚(ヴォイド)」を主題とした作品を発表してきた。写真、映像、インスタレーションなど多様なメディアを駆使しながら、世界の不確かさや記憶の痕跡を探る実践を続けている。

 本展では、「松」を主題とし、日本文化における松の象徴的・実用的な両義性に注目する。菅が松に関心を抱く契機となったのは、広島で出会った被爆した能道具である。以降、能を主題とした制作に取り組み始めた菅は能舞台の空間性や舞台に描かれる松の絵に着目する。

 さらに菅は、松煙墨や松根油といった生活資源としての松にも目を向けることで、象徴性と実用性の双方から松の文化史を読み直し、そこに人々の精神性や生活の痕跡を見出そうとしている。本展では、「松の空虚」という視点のもと、多層的な表現が試みられている。また、かつて松林が広がっていた久万高原町の風景を想起させる展示構成によって、土地の記憶を呼び起こす意図も含まれている。

 展覧会タイトル「The Long Wait」は、「松」の語源が「待つ(wait)」に由来するという説に着想を得ており、ときの流れのなかで人々が抱いてきた祈りや期待、記憶を想起させる。幼少期からよく訪れていた久万高原町で、自然のなかで時間を過ごしてきた作家が、本展において自然と人間の関係性を問い直す新たな展開を提示する。