前田裕「co-form」

　亀戸アートセンターで、前田裕の個展「co-form」が開催される。

　前田は、自然や生命の営みを独自の視点から探求し、絵画や陶芸、アニメーションなど多様な表現を通じて活動してきた。西洋と東洋の芸術やアニミズムから影響を受け、自然や生き物の形を単純化した線や形で再構築し、多角的に観察できるイメージを生み出している。

　本展タイトル「co-form」は「互いにかたちづくる」という意味を込めた造語である。会場には同じモチーフをもとに制作された絵画と陶芸作品のペアが展示される。

　3年前に始めた陶芸の経験は、前田の絵画表現に偶然性やゆるやかさをもたらした。現在はアクリルによる下地に油彩を重ね、偶然と意図的なコントロールを共存させる手法を特徴としている。また、直感的に描き始める制作スタイルへと移行した背景には、陶芸で体感した「完全なコントロールからの解放」がある。モチーフには自然界の生き物が多く登場し、とくに水陸双方に関わり、生態系の健全さを示す象徴的な存在としてカエルを取り上げている。寓話「蠍と蛙」に着想を得た作品では、生物の本能や自然の摂理が暗示されている。

　絵画と陶芸という異なるメディウムが呼応し合うことで、前田の新たな展開を示す展示となるだろう。