EXHIBITIONS
小林孝亘 絵本「さようなら、こんにちは」原画展
西村画廊で、小林孝亘の単著としては初の絵本となる『さようなら、こんにちは』(求龍堂)の刊行を記念して、同書の原画展が開催されている。
小林は1960年東京生まれ。1986年愛知県立芸術大学美術学部油画科を卒業。大学卒業後、外界との接触を自己防衛的に避ける自身の投影として9年近く描き続けた「潜水艦」シリーズを制作。その後、器や枕、森など普遍的で日常的なものを題材に、光に重点を置いた絵画を制作してきた。つねに時流から一定の距離を保ち、地道に自身の内側を手探りしながら本質的な表現を志向してきたその作品は、主に正面から見た左右対称の構図となっている。人々が普段目にしているごくありふれたものが、奇を衒わない丁寧な筆触で描かれているのが特徴だ。西村画廊で1996年から継続的に新作展を開催しているほか、国立国際美術館(2000)、目黒区美術館(2004)、横須賀美術館(2014)、豊田市美術館(2022)での個展をはじめ、国内外で多数の展覧会歴がある。
2024年に病とその手術を経験した小林は、退院後の同年4月頃から、絵画制作のリハビリとしてドローイングを描きはじめた。再び基本的な形を描けるようになってからは、ペンと鉛筆、色鉛筆による緻密な筆致で、自身にとって「生」の象徴である「森」のドローイングを制作するようになる。「1枚仕上がると、自然に次のイメージが浮かんできた」というそれらの作品は、25年6月末まで描き進められ、やがて小林の内的世界を映し出すひとつの物語のようなものとして完結した。
空を上がっていく雲に「死」の気配を感覚した語り手が、もう一度「生」の方へ戻っていくという内容のこの絵本には、小林作品に頻出する積み木、壺、川、舟、焚き火などをはじめ、これまでほとんど描かれることのなかった花や動物といったモチーフも登場し、全体を通して生命の静かな輝きに彩られている。そこで展開される、どこかこの世ならぬ神秘をまとった世界は、未知であるのになぜか親近感もあり、相反する不思議な魅力を感じさせる。
小林は1960年東京生まれ。1986年愛知県立芸術大学美術学部油画科を卒業。大学卒業後、外界との接触を自己防衛的に避ける自身の投影として9年近く描き続けた「潜水艦」シリーズを制作。その後、器や枕、森など普遍的で日常的なものを題材に、光に重点を置いた絵画を制作してきた。つねに時流から一定の距離を保ち、地道に自身の内側を手探りしながら本質的な表現を志向してきたその作品は、主に正面から見た左右対称の構図となっている。人々が普段目にしているごくありふれたものが、奇を衒わない丁寧な筆触で描かれているのが特徴だ。西村画廊で1996年から継続的に新作展を開催しているほか、国立国際美術館(2000)、目黒区美術館(2004)、横須賀美術館(2014)、豊田市美術館(2022)での個展をはじめ、国内外で多数の展覧会歴がある。
2024年に病とその手術を経験した小林は、退院後の同年4月頃から、絵画制作のリハビリとしてドローイングを描きはじめた。再び基本的な形を描けるようになってからは、ペンと鉛筆、色鉛筆による緻密な筆致で、自身にとって「生」の象徴である「森」のドローイングを制作するようになる。「1枚仕上がると、自然に次のイメージが浮かんできた」というそれらの作品は、25年6月末まで描き進められ、やがて小林の内的世界を映し出すひとつの物語のようなものとして完結した。
空を上がっていく雲に「死」の気配を感覚した語り手が、もう一度「生」の方へ戻っていくという内容のこの絵本には、小林作品に頻出する積み木、壺、川、舟、焚き火などをはじめ、これまでほとんど描かれることのなかった花や動物といったモチーフも登場し、全体を通して生命の静かな輝きに彩られている。そこで展開される、どこかこの世ならぬ神秘をまとった世界は、未知であるのになぜか親近感もあり、相反する不思議な魅力を感じさせる。