EXHIBITIONS

磯村暖「並行情報(Informāre Pariter)―プラスチックの中に、雲の中に」

2025.10.10 - 11.01

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 TAV GALLERYで、磯村暖による個展「並行情報 (Informāre Pariter) ― プラスチックの中に、雲の中に」が開催される。

 磯村暖は、デビュー以降、アニミズム、水の循環、上座部仏教などの非西洋中心主義的な表現の視点、グローバリゼーション、クィア理論、ポストヒューマン、スピリチュアリズム、疎外論、ソーシャルメディア文化やヴォーギングといった多様な文脈を横断しながら活動を展開してきた。

 近年の磯村は、たんに制度や市場原理への対抗を表明するのではなく、科学的事実や言語の不安定性といった基盤から、人々の存在やつながりを根源的に問い直す作品を制作している。

 それらの実践は、所有や保存を前提としない形態や、制度に収まりきらない作品の在り方を生み出しつつ、鑑賞者に人間存在の広がりと関係性を再考させるものであり、美術の構造そのものを撹乱し更新する試みとなっている。

 本展において、同廊のディレクター・佐藤栄祐は、磯村の活動を情報社会と身体、魂(アニマ)との関係性を問い直す試みとして位置づけ、複雑な実践を鑑賞者と共有しつつ整理し「情報の外圧からの解放」を目指すとのこと。

 今回の展示では、インタラクティブな「シャボン玉」が使われた大型インスタレーションを中心に、新作の絵画作品と、約500文字の詩がシャボン玉の吹き口となり、身体の風を呼び起こす映像作品が出展される。

 3つの局面「アニマを宿した原始の風」「情報として形を与えられた言葉」「形や秩序を解体するinforme(ラテン語「informis」に由来する「無形」)」を断絶ではない、連続の歴史として捉え直す。そのうえで、言語化以前の身体が発する「風」として、音のない吐息、いびき、笑い声などが形を与えた集積を、既存の情報に並走する「並行情報」として扱い、その可視性(可聴性)と作用範囲を拡張することが提案されるという。