森栄喜「Moonbow Flags」

　KEN NAKAHASHIで、森栄喜による個展「Moonbow Flags」が開催されている。

　本展では、森が描いた白い図形とポートレイトを組み合わせた新しい写真シリーズ「Moonbow Flags」を発表。

　本作の着想のひとつとなったのが、1968年5月にフランスで起きた「五月革命」のスローガン「敷石の下はビーチ！」という言葉だ。この言葉を起点に、森は国家や権力の象徴としての「旗」と、日常のなかで見られるキッチンのタイル模様や壁紙の幾何学模様とを組み合わせ、固定されたシンボルの意味を再解釈する試みを行った。

　本シリーズでは、過去10年間に撮影された未発表のポートレイトと、旗の幾何学的構成を参照して描いた白い図形をフォトグラム技法によって重ね合わせ、約24点の作品を制作。光景が記録されたネガフィルムと、図形が描かれたアクリル板という異なるレイヤーを暗室で重ね、1枚の写真プリントとして焼き付けることで、それぞれが独立しながらも侵食し合う新たな表現がつくり出された。

　今回の展示では、これまでのように個の行為に着目しながらも、「旗を掲げる」ことに焦点を当て、一人ひとりの行為が社会のなかでどのように機能しえるのかを問い直す。旗というシンボルが個々の存在によって流動し変化しうることの可能性を標榜し、個人と社会の関係性をより視覚的に浮かび上がらせる。