• HOME
  • MAGAZINE
  • NEWS
  • REPORT
  • 「拡⼤するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション…
2025.12.13

「拡⼤するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」が開幕。視覚芸術にとどまらないシュルレアリスムの魅力と影響

大阪中之島美術館で「拡⼤するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」が始まった。

本展のメインビジュアルにも使用されたルネ・マグリット《王様の美術館》(1966)と《レディ・メイドの花束》(1957)
前へ
次へ

 大阪中之島美術館で「拡⼤するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」が始まった。会期は2026年3月8日まで。担当学芸員は國井綾(同館主任学芸員)。

 シュルレアリスム(超現実主義)は、1924年にアンドレ・ブルトンが定義づけた動向で、無意識や夢に着⽬した、フロイトの精神分析学に影響を受けて発⽣したものである。⽂学を基点に、オブジェや絵画、写真・映像といった視覚芸術をはじめ、広告やファッション、インテリアへと幅広く展開した。

 シュルレアリスムの起こりから約100年が経過したいま。本展は、サルバドール・ダリマックス・エルンストルネ・マグリットをはじめとするシュルレアリスムの代表的な作家たちの作品を含め、⽇本国内に所蔵されている優品が集結。シュルレアリスムの本質に迫ることを目指すとともに、表現媒体をキーワードに章立てすることで、シュルレアリスム像の再構築を試みる。

プロローグにはルネ・マグリット《人間嫌いたち》(1942)やエルザ・スキャパレッリのイブニング・ドレス「サーカス・コレクション」(1938)などが並ぶ
アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』の初版本(1924)

 第1章は「オブジェ―『客観』と『超現実』の関係」では、あらゆる事象を、客体(=オブジェ)として見つめることで「超現実」と向き合ったシュルレアリストたちのオブジェが紹介。

宙に浮かぶのはマルセル・デュシャン《帽子かけ》(1917/1964)
左はマルセル・デュシャン《折れた腕の前に》(1915/1964)、右はジャン(ハンス)・アルプ《植物のトルソ》(1959)

 第2章「絵画―視覚芸術の新たな扉」では、文学的な実験に由来するシュルレアリスムの技法「自動筆記」(オートマティスム)による絵画作品に焦点が当てられる。主観を離れ、無意識が浮かび上がる絵画の多様なバリエーションに注目だ。

本展のメインビジュアルにも使用されたルネ・マグリット《王様の美術館》(1966)と《レディ・メイドの花束》(1957)

 第3章「写真―変容するイメージ」では、写真表現によってシュルレアリスムに向き合った作家の作品に迫る。ここではマン・レイを筆頭に、各国の芸術家が挑戦した多彩な写真表現に注目したい。

手前はモーリス・バタール《無題(自写像のコラージュ)》(1930)

 本展の大きな特徴は、視覚化芸術のみならず、広告やファッション、インテリアなどより日常に根ざしたものを視覚化した点にある。4章以降はそうした視覚芸術以外のジャンルにフォーカスしたセクションだ。

 第4章「広告―『機能』する構成」では、デペイズマンやコラージュ、フォトモンタージュなどシュルレアリスムにおいて多用されたテクニックを発揮した広告にフォーカス。いまでも通用する強い訴求力を持った広告表現に目を奪われるだろう。

手前はマックス・エルンストによるポスター「国際シュルレアリスト展」(1936)、

 第5章「ファッション―欲望の喚起」は、シュルレアリスムとモード、ファッションとの関係に迫るもの。ここでのメインは、シュルレアリストたちとの交流が深かったデザイナー・スキャパレッリの作品だ。冒頭に紹介されたスキャパレッリの代名詞ともいえるショッキング・ピンクのドレスのみならず、イブニング・ドレスや独自のデザインが施された香水瓶やジュエリーなど、多岐にわたるスキャパレッリ作品は大きな見どころ。

手前はサルバドール・ダリ《抽き出しのあるミロのヴィーナス》(1936/1964)、奥にはスキャパレッリのドレス
スキャパレッリのアクセサリー類

 最後の第6章「インテリア―室内空間の変容」では、家具に焦点が当てられる。違和感を引き起こして現実に揺さぶりをかけるシュルレアリスムにとって、日常生活の場である室内の安定した秩序を転覆させることには大きな意味があった。家具を奇妙なオブジェに置き換えることで、シュルレアリスムによる空間への関与に挑戦した動きについて紐解く内容となる。

6章の展示風景。奥にはポール・デルヴォーが壁画のために描いた絵画が並ぶ

 なお本展は前後期で展示替えあり。2026年4月16日から東京オペラシティ アートギャラリーへと巡回する。