2025.8.5

戦後80年の夏に見るべき展覧会8選

今年は太平洋戦争終結から80年の節目。これにあわせ、日本各地で戦争にまつわる展覧会が開催されている。

特別展「被爆80周年記念 記憶と物 ―モニュメント・ミュージアム・アーカイブ―」(広島市現代美術館)展示風景より
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「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」(東京国立近代美術館

東京国立近代美術館

 東京国立近代美術館では「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」が開催されている。

 しばしば美術は「時代を映し出す鏡」と言われる。その視覚的なイメージには、作家の感性を介して、制作時の世相や文化が刻印されている。それだけではなく、美術は時代を超えて生き続けることにより、後の世代によって新たに意味づけられるものでもある。「昭和100年」にあたり、なおかつ「戦後80年」を迎える2025年という節目の年に、本展ではコレクションとアーカイブ資料を駆使することで美術に堆積した記憶を読み解きながら、多様な視点で歴史に迫る美術館の可能性を探る。米国より永久貸与されている戦争画も展示。

会期:2025年7月15日~10月26日
会場:東京国立近代美術館
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
電話:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00(金土〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月、8月12日、9月16日、10月14日(ただし8月11日、9月15日、10月13日は開館)
料金:一般 1500円 / 大学生 800円 / 高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名無料

令和7年夏の特別展 「終戦―戦争の終わりと戦後の始まり―」(国立公文書館 東京本館)

 東京国立近代美術館と隣接する国立公文書館では現在、令和7年夏の特別展 「終戦―戦争の終わりと戦後の始まり―」が開催中だ。

 1945年の日本では、悪化する戦況や、激しさを増す日本本土への空襲に対応して、疎開をはじめとする政策が実施。また8月15日には終戦を告げる玉音放送が行われた。そのいっぽう、終戦後の占領下の日本では、今日の社会にもつながる様々な改革が短期間に行われていった。本展では、日本が大きな変化を迎えた年である1945年の出来事について、同館所蔵資料を中心に紹介。とくに8月8日~8月21日には「終戦の詔書」の原本が特別展示される。

会期:2025年7月19日~9月15日
会場:国立公文書館 東京本館
住所:東京都千代田区北の丸公園3-2
電話:03-3214-0621
開館時間:9:15~17:00(金〜20:00)
休館日:8月25日
料金:無料

「被爆80年企画展 ヒロシマ1945」(東京都写真美術館

展示風景より、左が山田精三、右が深田敏夫撮影のきのこ雲(8月6日)

 東京都写真美術館で広島原爆の被害をとらえた写真や映像を公開する展覧会「被爆80年企画展 ヒロシマ1945」が8月17日まで開催されている。

 第2次世界大戦末期の1945年8月6日午前8時15分、米軍がB29爆撃機「エノラ・ゲイ」から人類史上初めて、都市の上空に原子爆弾を投下。広島の市街地は壊滅的な被害を受けた。本展では、広島市民や報道機関のカメラマン、写真家の手による広島原爆写真約160点と映像2点を公開。資料の所蔵や保存・活用に携わってきた報道機関が連携し、原爆写真と映像の展覧会を主催するのは初の試みだ。詳細なレポートはこちら

会期:2025年5月31日~8月17日
会場:東京都写真美術館
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
電話:03-3280-0099
開館時間:10:00~18:00(木金〜20:00) ※入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、祝休日の場合は翌平日)
観覧料:一般 800円 / 65歳以上 500円 / 大学生以下、障害者手帳をお持ちの方と介護者2名まで 無料

「戦後80年 《明日の神話》 次世代につなぐ 原爆×芸術」展(川崎市岡本太郎美術館

 広島市立基町高等学校の生徒たちが描いた「原爆の絵」をきっかけにした展覧会が、川崎市岡本太郎美術館で開催中。

 広島の爆心地に程近い基町高校では、創造表現コースの生徒たちが被爆者から半年以上の時間をかけて話を聞きとり、その記憶を「次世代と描く原爆の絵」として描く活動を20年近く続けている。本展はこの「原爆の絵」42点、そして岡本太郎の作品に加え、同じように核の問題に取り組む、現代の第一線で活躍する作家たちの作品によって構成されている。

会期:2025年7月19日~10月19日
会場:川崎市岡本太郎美術館
住所:川崎市多摩区枡形7-1-5
開館時間:9:30〜17:00 ※入館は16:30まで
休館日:月(8月11日、9月15日、10月13日を除く)、8月12日、9月16日、9月24日、10月15日
料金:1000円 / 高校・大学生・65歳以上 800円 / 中学生以下無料

「戦後80年-戦争とハンセン病」(国立ハンセン病資料館)

展示風景より

 東京・東村山にある国立ハンセン病資料館で、ギャラリー展「戦後80年-戦争とハンセン病」が8月31日まで開催中だ。

 国立ハンセン病資料館とは、患者・回復者とその家族の名誉回復を図るために、ハンセン病に関する正しい知識の普及や理解の促進による、偏見や差別、排除の解消を目指す施設。同館において初めて「戦争」というテーマを取り上げる本展は、九段下にあるしょうけい館(戦傷病者史料館)との共催企画として開催されている。「戦時下のハンセン病療養所」「日本植民地下の療養所」「沖縄戦」などに関連する資料を展示することで、戦争がハンセン病患者の隔離を強化し、戦争が隔離下の被害をより深刻にしたという事実を浮き彫りにすることを試みるものとなっている。詳細なレポート記事はこちら

会期:2025年7月19日~8月31日
会場:国立ハンセン病資料館1階ギャラリー
住所:東京都東村山市青葉町4-1-13 
開館時間:9:30~16:30 ※入場は16:00まで 
休館日:月(ただし、月が祝日の場合は開館し、翌平日休館)、年末年始、館内整理日
料金:無料

終戦80周年記念特別企画「藤田嗣治 戦争と芸術のはざまで-戦場、銃後の風景、日常を描く-」(軽井沢安東美術館

 軽井沢安東美術館で、終戦80周年を記念した特別企画「藤田嗣治 戦争と芸術のはざまで-戦場、銃後の風景、日常を描く-」が開催中だ。

 第二次世界大戦下において、画家が戦地に赴いて取材をするかたわら、戦場や兵士の様子、現地の風景、そして銃後の生活などを描いた作戦記録画・戦争記録画が数多く制作された。制作したのは、戦意高揚と軍の宣伝を目的に指名を受けた一流の画家たち。彼らは従軍画家と呼ばれ、1938年、藤田もこのメンバーに加わった。しかし戦後、従軍画家は画家仲間からの厳しい批判を受ける。

 それに対し、藤田は「画家とは真の自由愛好家で、軍国主義者であろうはずがない、『戦争発起人でも』『捕虜を虐待した訳でもなく』、国民の義務を果たしただけと考えているが、本当に戦犯として裁かれるのであれば、せめて紙と鉛筆だけを与えてほしい」と主張。こうした言葉には、国民の義務として従軍しつつも、画家として戦争画と向き合った藤田の姿がうかがえる。本展では、終戦80周年を記念した特別企画として、藤田が描いた戦争画をはじめ、戦時下における彼の様々な画業を紹介。藤田の言葉も手がかりとしながら、戦時下で制作された数々の作品を丁寧に読み解いていく。

会期:2025年7月17日~9月28日
会場:軽井沢安東美術館
住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東43-10
電話番号:0267-42-1230
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:水(祝日の場合は翌平日) ※8月中の水曜日は開館
料金:一般 2300円 / 高校生以下 1100円 / 未就学児 無料

被爆80周年記念「記憶と物 ―モニュメント・ミュージアム・アーカイブ―」(広島市現代美術館

展示風景より

 広島市現代美術館で9月15日まで特別展「被爆80周年記念 記憶と物 ―モニュメント・ミュージアム・アーカイブ―」が開催されている。

 本展は、戦争や原爆の記憶と美術表現との関係をテーマとし、戦中につくられた銅像やそのつくり手、そして戦後に再建された像の例から、それらが関係した記憶の形成、忘却、再構成について思考を巡らせるもの。加えて、モニュメント、ミュージアム、アーカイヴといった記憶形成にかかわるものや活動を主題とするアーティストたちの試みを紹介。「ヒロシマ」をテーマとした同館のコレクションをあわせて展示することで、過去の営みと対話的に向きあう姿勢や、表現や制度を通して形成される戦争の記憶、当事者性、過去を継承する可能性についての対話的と建設的な議論、そして思索の場を提起するものとなっている。詳しいレポート記事はこちら

会期:2025年6月21日~ 9月15日
会場:広島市現代美術館 B展示室
住所:広島県広島市南区比治山公園1-1
電話番号:082-264-1121
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし8月11日、9月15日は開館)、8月12日
料金:一般 1600円 / 大学生 1200円 / 高校生・65歳以上 800円  / 中学生以下無料

「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」(長崎県美術館

フランシスコ・デ・ゴヤに帰属 巨人 1808年以後 油彩、カンヴァス プラド美術館蔵 ©Photographic Archive. Museo Nacional del Prado. Madrid

 長崎にとって被爆80年の節目である今年、長崎県美術館では戦争をテーマとした展覧会「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」が開催されている。

 本展は、原爆のみならず、それを引き起こした戦争に焦点を当てるもの。スペイン美術を標榜する美術館として、収蔵作品であるフランシスコ・デ・ゴヤの版画集〈戦争の惨禍〉を中心に据え、そこから抽出されるテーマに沿って展覧会を構成。〈戦争の惨禍〉全82点とともに、ほかの芸術家たちが戦争をどのように視覚化してきたかを、約180点の作品によって考察する。なお会期中、パブロ・ピカソ《ゲルニカ》の原寸大複製陶板がエントランスロビーに特別展示される。

会期:2025年7月19日~9月7日
会場:長崎県美術館
住所:長崎県長崎市出島町2-1
電話番号:095-833-2110
開館時間:10:00~20:00 ※入場は閉館30分前まで
休館日:7月28日、8月25日 ※8月12日は臨時開館
料金:一般 1500円 / 大学生・70歳以上 1300円 / 高校生以下無料