2025.2.20

「正倉院『THE SHOW』」が大阪・東京で開催。新たな試みで幅広い客層狙う

「正倉院」とその「宝物」を、これまでとは異なる新しいアプローチで紹介する展覧会「正倉院『THE SHOW』-感じる。いま、ここにある奇跡-」が、宮内庁正倉院事務所全面監修のもと、大阪歴史博物館と上野の森美術館で開催される。

STAGE02 映像イメージ
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 奈良・東大寺旧境内にあり、9000件もの宝物を1300年近く守り伝えてきた正倉院。毎年秋に宝物を一般公開する「正倉院展」は、多くの人々で賑わうことで知られている。その「宝物」をこれまでにない方法で紹介する展覧会「正倉院『THE SHOW』-感じる。いま、ここにある奇跡-」が、大阪歴史博物館(6月14日〜8月24日)と上野の森美術館(9月20日〜11月9日)で開催される。

正倉院正倉
提供=宮内庁正倉院事務所

 本展は宮内庁正倉院事務所が全面監修。最新のデジタル制御による映像・音楽・照明と、宮内庁正倉院事務所が研究・製作を進めてきた「再現模造」の数々(現代の名工達が宝物本来の姿を精巧に再現した作品群)のコラボレーションで、正倉院の世界の新たな感じ方・楽しみ方を提案する試みだ。

高精細デジタルデータを活用

 ポイントの一つ目が3Dデジタルデータ。正倉院事務所は宝物の正確な情報を後世に残すため、TOPPANとともに最新のテクノロジーを用いて360度から宝物のスキャンを行い、高精細な3Dデジタルデータを取得する取り組みを行ってきた。本展では3Dデジタルデータに演出を施した展示により、宝物の細部や質感をよりリアルに紹介。それを大スクリーンに映し出すことで、没入感ある鑑賞体験を提供する。

3Dデジタルデータ 漆金薄絵盤(うるしきんぱくえのばん)
撮影および計測=宮内庁正倉院事務所・TOPPAN株式会社
3Dデジタルデータ 木画紫檀碁局(もくがしたんのききょく)
撮影および計測=宮内庁正倉院事務所・TOPPAN株式会社
3Dデジタルデータ 螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)
撮影および計測=宮内庁正倉院事務所・TOPPAN株式会社
STAGE02 映像イメージ

再現模造やアーティストとのコラボも

 再現模造にも注目だ。正倉院事務所では、宝物の素材・構造・技法を忠実に再現し、本来の姿を甦らせることを目的に、再現模造の製作を行っている。本展では最新のデジタル制御による高精細映像・音楽・照明との組み合わせて展示することで、新たな鑑賞体験を提供する。出品点数は十数点が予定されている。

模造 螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)
提供=宮内庁正倉院事務所
模造 紫地鳳形錦御軾(むらさきじおおとりがたにしきのおんしょく)
提供=宮内庁正倉院事務所
模造 螺鈿箱(らでんのはこ)
提供=宮内庁正倉院事務所

 さらに本展では、正倉院宝物がアーティストたちとコラボレーション。正倉院にインスピレーションを受けて作品を制作・展示する。

 デザイナーとしても活動する篠原ともえは、正倉院宝物の「いまに通じる美」に着想を得て、伝統と現代を融合させた服飾作品を制作。ミュージシャンで音楽プロデューサーの亀田誠治は、様々な録音技術と音楽的な展開を掛け合わせ、1300年前の楽器の音をいまに響かせるという。また写真家・瀧本幹也は正倉院を現代写真家の視点で切り取った作品を発表。陶芸家・絵付師の亀江道子は宝物の文様を昇華させた陶芸作品を生み出す。

記者会見に登壇した篠原ともえ

 加えて本展では、青色のグラス「瑠璃杯(るりのつき)」のレプリカを、ガラス工芸作家・迫田岳臣と金属造形作家・田中均による合作によって実現させる。

 本展開催を前に開催された記者会見で、宮内庁正倉院事務所の飯田剛彦所長は正倉院宝物について「成立当初から勅封がなくては扱えないもので、極めて厳密に保存されてきた。世界に類のないもの」としつつ、「宝物をご覧いただける機会は非常に短いため、じくじたる思いがあった。宝物に負担をかけず、多くの方にその世界を知ってもらうためにこの企画は始まった」と、本展の背景について語った。

 また飯田氏は「コアなファンから馴染みのない方、外国人の方々を含めて幅広い方々に正倉院宝物を味わっていただければ」と意気込みを見せている。