2025.8.14

KAAT神奈川芸術劇場で大小島真木による劇場初個展が開催

神奈川・横浜にあるKAAT神奈川芸術劇場で、「KAAT EXHIBITION 2025大小島真木展 あなたの胞衣はどこに埋まっていますか?」が開催される。会期は9月21日~10月19日。

《 胞衣 | Ena 》 (Size: 225×1149mm) 部分
©︎2022 Maki Ohkojima Courtesy of Sezon Museum of Modern Art, Photo by Ken Kato
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 神奈川・横浜にあるKAAT神奈川芸術劇場で開催される「KAAT EXHIBITION」は、劇場空間と現代美術の融合による新しい表現を展開する同館の独自の企画シリーズだ。10回目となる今回は、大小島真木による「KAAT EXHIBITION 2025大小島真木展 あなたの胞衣はどこに埋まっていますか?」を開催。会期は9月21日~10月19日。

 大小島真木は、東京を拠点に活動する大小島真木と辻陽介からなるアートユニット。「いびつに絡まりあう生命」をテーマとして、絵画、立体、映像、インスタレーション、そして舞台美術など複数の表現方法で作品を展開する。当初は大小島のみで活動していたが、2023年より制作に関わっていた編集者・辻が本格的に制作に参加し、活動名をそのままに、現在はユニットとして活動中。

大小島真木 Photo by Aki Kawakami

 大小島は2024年から今年にかけて、文化庁新進芸術家海外研修制度の研修員としてメキシコに滞在し、第一子を出産。生命の誕生やそれを取り巻く伝統儀式を現地で体験したことが制作に影響を与えた。

 展覧会タイトルに用いられている「胞衣(えな)」は、日本語の古語で、母体の胎児を包んでいる羊膜と胎盤を表す。また、再生のシンボルや生死を超えて我々を包みこむ世界そのもののメタファーとして、世界各地で信仰されてきた。

 本展では会場全体を巨大な胞衣に見立て、その内奥に「祈り」の場を立ち上げる。大小島は「祈り」について次のように語る。「私たちにとって『祈り』とは、あるひとつの世界との関わり方です。生きていくなかで人はさまざま不条理や矛盾に見舞われますが、『祈り』とはそうしたなかで感じる痛みに対し、たんにその解決や克服を目指していくのではなく、そうした『痛み』を所与のものとして、その痛みとともに生きていこうとする、ひとつの姿勢です」。

 大小島が経験した「出産」という営みに関係づけ、いかなる状況においても命が生成されていくというプロセスへ捧げる祈りの世界を表現する本展は、大小島にとっての劇場初の個展となる。

 なお関連イベントとして、舞踏家・松岡大が大小島真木のインスタレーション空間内で行うパフォーマンスや、アーティストトーク、岩手県の遠野において郷土芸能と現代カルチャーを織り交ぜ、目に見えないものへ想像をめぐらせるイベント「遠野巡灯篭木(トオノメグリトロゲ)」とのコラボレーションも開催される。