2025.11.18

DIC川村記念美術館コレクションの名品、NYで総額165億円で落札

今年3月に閉館したDIC川村記念美術館の所蔵品が、クリスティーズ・ニューヨークの秋季オークションウィークに登場した。11月17日のイブニングセールではモネ《睡蓮》をはじめとする8作品が競り落とされ、総額約165億円に達した。

文=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

11月17日にクリスティーズ・ニューヨークで行われた「20世紀美術イブニングセール」のライブ中継の様子
前へ
次へ

 今年3月31日に千葉県佐倉市での運営を終了したDIC川村記念美術館が所蔵する作品の一部が、クリスティーズ・ニューヨークの秋季オークションに出品された。

 11月17日に行われた「20世紀美術イブニングセール」では、同館のコレクションから8点が登場した。なかでも目玉のひとつであるクロード・モネ《睡蓮》(1907)は、4000万〜6000万ドルの予想落札価格に対し3900万ドルで落札され、手数料込みで4549万ドル(約70億6600万円)を記録した。

クロード・モネ 睡蓮 1907 出典=クリスティーズのウェブサイトより

 続いて、ピエール=オーギュスト・ルノワール《水浴する女》(1891)は予想750万〜1000万ドルの範囲内で850万ドル(手数料込み1041万ドル/約16億1700万円)で落札。アンリ・マティス《肘掛け椅子の裸婦》(1920)は最低予想額250万ドルを大きく上回る550万ドル(手数料込み679万ドル/約10億5500万円)に達した。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 水浴する女 1891 出典=クリスティーズのウェブサイトより
アンリ・マティス 肘掛け椅子の裸婦 1920 出典=クリスティーズのウェブサイトより

 同セールにはマルク・シャガールの2作品も出品された。1966年制作の大作《ダヴィデ王の夢》は、予想800万〜1200万ドルを大幅に超える2200万ドルで落札され、手数料込み2651万ドル(約41億1800万円)に到達。会場では落札直後に拍手が起こった。いっぽう、1949年の《赤い太陽》は予想700万〜1000万ドルの範囲で860万ドル(手数料込み1053万ドル/約16億3600万円)で落札されている。

マルク・シャガール ダヴィデ王の夢 1966 出典=クリスティーズのウェブサイトより
マルク・シャガール 赤い太陽 1949 出典=クリスティーズのウェブサイトより

 同セールの後半には3点の作品が登場した。李禹煥による《風より》(1986)は、予想100万〜150万ドルに対して120万ドルで落札され、手数料込みで152万ドル(約2億3600万円)となった。

李禹煥 風より 1986 出典=クリスティーズのウェブサイトより

 続いて、デイビッド・スミス《ヴォルトリ=ボルトン IV》(1962)は100万ドルで落札されたが、最低予想落札価格の120万ドルには届かなかった(手数料込み127万ドル/約1億9700万円)。

デイビッド・スミス ヴォルトリ=ボルトン IV 1962 出典=クリスティーズのウェブサイトより

 また、長年DIC川村記念美術館の庭園に設置され、多くの来館者に親しまれてきたヘンリー・ムーアの大型彫刻《ブロンズの形態》(1985)は、最低予想価格300万ドルをわずかに上回る310万ドルで落札され、手数料込み386万ドル(約6億円)を記録した。

ヘンリー・ムーア ブロンズの形態 1985 出典=クリスティーズのウェブサイトより

 8点の落札総額は手数料込み1億637万ドル(約165億円)。DICは、同館が所蔵していた美術品384点のうち約4分の3にあたる280点程度の売却を検討しており、そのうち主要作品約80点をクリスティーズの国際オークションに出品している。17日のイブニングセールに続き、11月18日〜20日の印象派・近代美術デイセールおよび戦後・現代美術デイセールにも複数の作品が出品される予定だ。

 残る売却対象作品については、オークション以外の手段も含め、2026年12月まで段階的に処分を進める計画とされる。DICはそれらの売却により、少なくとも100億円規模の資金確保を目指している。