2025.9.24

ロスコやホックニーの稀少作品も。クリスティーズ、NY秋季オークションでDICをはじめとする様々なコレクションが競売に

クリスティーズがこの秋、ニューヨークで開催される秋季オークションウィークにおいて、20・21世紀美術の重要な作品群を披露する。マーク・ロスコやデイヴィッド・ホックニーらの代表作、DIC川村記念美術館からの出品作などがラインナップされている。

左からマーク・ロスコ《No.31 (Yellow Stripe)》、マックス・エルンスト《Le roi jouant avec la reine》、ピート・モンドリアン《Composition with Red and Blue》 Photo by Vivian Marie Doering. © 2025 Vivian Marie Doering
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 クリスティーズはこの秋、ニューヨークで開催される秋季オークションウィークにおいて、20・21世紀美術の重要な作品群を一堂に紹介する。

 ロバート・F・およびパトリシア・G・ワイス夫妻のコレクション、デイヴィッド・ホックニーによる重要なダブル・ポートレイト、エレイン・ウィンの個人コレクション、さらにDIC川村記念美術館からの出品作など、多彩なセールが予定されている。

 なかでも注目を集めるのが、アメリカのスーパーマーケット「ワイス・マーケッツ」の元会長ロバート・F・ワイスとパトリシア夫人が収集したコレクションである。夫妻は70年にわたり収集活動を続け、フォーヴィスム、キュビスム、シュルレアリスム抽象表現主義といった20世紀を代表する美術運動を網羅する作品群を築き上げた。今回、18点が単独のイブニングセールとして出品され、総額1億8000万ドル(約266億円)超の落札が見込まれている。

パブロ・ピカソ La lecture (Marie-Thérèse) 1932

 パブロ・ピカソの《La lecture (Marie-Thérèse)》(1932)は、ボワジェルーのアトリエで制作された代表的な肖像画で、推定落札価格は約4000万ドル(約59億円)に達するとみられる。マーク・ロスコの《No.31 (Yellow Stripe)》(1958)は、作家のキャリアでもっとも重要とされる年に描かれた大作で、約5000万ドル(約74億円)の落札が予想されている。さらに、アンリ・マティス《Figure et bouquet (Tête ocre)》(1937、推定1500万~2500万ドル)、ピート・モンドリアン《Composition with Red and Blue》(1939–41、推定2000万~3000万ドル)などもラインナップに加わる。

マーク・ロスコ No.31 (Yellow Stripe) 1958
ピート・モンドリアン Composition with Red and Blue 1939–41

 20世紀イブニングセールのハイライトとしては、デイヴィッド・ホックニーの代表作《Christopher Isherwood and Don Bachardy》(1968)が挙げられる。本作はホックニーが手がけた最初のダブル・ポートレイトであり、後年の連作の礎となった作品である。小説『シングルマン』で知られる英国作家クリストファー・イシャウッドと、パートナーの画家ドン・バチャーディをサンタモニカの自宅で描いたもので、親密かつ緊張感のある視線の交錯が印象的だ。

デイヴィッド・ホックニー Christopher Isherwood and Don Bachardy 1968

 ホックニーのダブル・ポートレイトはわずか7点しか存在せず、その多くが美術館に収蔵されているため、市場での出品は極めて稀少である。そのうちの1点《Portrait of an Artist (Pool with Two Figures)》が2018年、クリスティーズにて9031万ドルで落札され、存命作家としての世界記録を樹立したことでも知られる。今回の出品作も5000万ドル(約74億円)以上の落札が期待されている。

 また、アメリカの実業家エレイン・ウィンのコレクションもセールを彩る。推定落札総額は7500万ドル(約111億円)超とされ、19世紀から21世紀にかけての名品を含む。最古の作品はJ.M.W.ターナーによる《Ehrenbreitstein, or The Bright Stone of Honour and the Tomb of Marceau, from Byron's Childe Harold》(1835、推定1200万~1800万ドル)である。ほかにも、ルシアン・フロイド《The Painter Surprised by a Naked Admirer》(2005、推定1500万~2500万ドル)、リチャード・ディーベンコーン《Ocean Park #40》(1971、推定1500万~2500万ドル)、ジョアン・ミッチェル《Sunflower V》(推定1200万~1800万ドル)などが含まれる。

J.M.W.ターナー Ehrenbreitstein, or The Bright Stone of Honour and the Tomb of Marceau, from Byron's Childe Harold 1835

 さらに、今年運営を終了したDIC川村記念美術館からも作品が出品される。印象派から現代美術までを横断する同館のコレクションは、日本における西洋美術コレクションのなかでも国際的に高い評価を受けてきた。今回のオークションでは、クロード・モネ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、マルク・シャガール、アンリ・マティス、ヘンリー・ムーアらによる名品8点が20世紀イブニングセールで披露される予定だ。

クロード・モネ 睡蓮 1907