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2025.1.25

「花器のある風景」(泉屋博古館東京)開幕レポート。名脇役としての「花器」の変遷をたどる

東京・六本木の泉屋博古館東京で、企画展「花器のある風景」がスタートした。会期は3月16日まで。 ※主催者の許可を得て撮影しています。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より
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 東京・六本木の泉屋博古館東京で、企画展「花器のある風景」がスタートした。会期は3月16日まで。担当学芸員は、廣川守(泉屋博古館館長)、森下愛子(同館主任学芸員)、田所泰(同館東京学芸員)。本展は、住友コレクションから花器と花器が描かれた絵画を紹介するとともに、華道家・大郷理明より寄贈された花器コレクション展を同時開催している。

展示風景より

 会場は大郷コレクション展を含め全4章の構成だ。第一章「描かれた花器」では、住友コレクションのなかから花器が描かれた絵画を紹介することで、近世以降に見られた人々の花器への関心やその表現に着目している。

 とくに中国の宋時代には古銅器の見直しが行われ、それらを模した陶磁器がつくられるとともに、多様な表現も生まれたという。その花器の一部が日本にも伝わり重宝され、文人文化に憧れる人々のあいだでも関心が高まっていったようだ。

展示風景より、左から椿椿山《玉堂富貴図》(三幅対のうち、1840)、原在中・原在明《春花図》(19世紀)
展示風景より、《唐児遊図屏風》(18世紀)

 第二章「茶の湯の花器」では、住友コレクションから茶の湯とともに用いられてきた花器を紹介している。住友コレクションといえば、明治から大正期において住友の近代化に尽力し、またコレクションの柱を築いたとも言える十五代住友春翠(1864~1926)の名が挙げられる。ここでは、とくに茶の湯の世界とつながりの深い春翠と、十二代友親らによって収集されてきた逸品がずらりと並べられている。

展示風景より
展示風景より、《古銅象耳花入 銘 キネナリ》(14世紀)

 今回もっとも広い展示室では、同時開催となる「大郷理明コレクションの花器」展が第三章として展示されている。ここでは、華道家・大郷理明より近年寄贈された同氏による銅器、陶磁器、漆器の花器コレクションが数多く紹介されており、「いけばな」という総合芸術を構成する要素のひとつとしての「花器」にフォーカスするものとなっている。

展示風景より

 その佇まいを比較してみると、シンプルなものからいまにも動き出しそうなものまでと多種多様であることに気がつく。また、古代中国に由来する伝統的な鋳金技術、そして江戸時代の日本から受け継がれている独自の表面着色技術もその表情から読み取ることができ、花を美しく見せるための様々な造形的な工夫が施されていることにも理解が深まるだろう。

展示風景より
展示風景より、横河九左衛門《紫銅牛形薄端》(19世紀)

 最終章となる「花入から花瓶へ─近代の花器─」では、江戸時代以降の近代における花器の変遷を取り上げている。ここでは、万国博覧会にてその技術力をアピールするために制作された美術工芸品や、国内外からの来賓をもてなす場に置かれた調度品までが並んでおり、欧米からの影響も見受けられるような華やかな意匠が印象的だ。

 「いけばな」など、「花を見る」「花を愛でる」という行為において、あくまでメインは「花」であって、「花器」にまで目を向ける機会はそう多くはないかもしれない。本展は、人々が花を楽しんできた文化をたどることで、それを引き立ててきた名脇役としての花器の在り方や、その変遷にも目を向けることができる貴重な機会となっている。

展示風景より、幹山伝七《色絵金彩花鳥模様耳付花瓶 1対》(19世紀)