2025.1.30

米谷健+ジュリア「CRYSTAL PALACE」(art cruise gallery)開幕レポート。ウランガラスのシャンデリアが示すものとは?

アーティストユニット・米谷健+ジュリアによる個展「CRYSTAL PALACE」がart cruise galleryでスタートした。

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 株式会社ベイクルーズが運営する虎ノ門ヒルズ ステーションタワー内のアートギャラリー「art cruise gallery by Baycrew’s」で、第6回展示として米谷健+ジュリアの個展「CRYSTAL PALACE」が始まった。

 米谷健+ジュリアは元金融ブローカーと元大学の歴史学者という異色のアートユニット。現在は京都を拠点に、有機農業も営みつつ制作活動を行っている。インスタレーション、パフォーマンス、立体や映像など様々な表現方法で、環境問題や社会問題を美的かつユーモアあふれる作品に変換し、国際的にも高い評価を受けているアーティストユニットだ。これまで「ヴェネチア・ビエンナーレ 2009」(豪州代表)、「シンガポールビエンナーレ 2013」「江原国際トリエンナーレ 2024」などに参加。またオーストラリア国立美術館や角川武蔵野ミュージアムなどで個展を行ってきた。

 東日本大震災が起きた2011年、ロンドンにおける展覧会の際に1ヶ月ほど現地滞在したふたり。ロンドンの高級ホテルに設置されたまばゆいシャンデリアから着想し、電力と文明をつなげ、放射性物質を可視化するウランガラスを用いた作品を生み出した。

展示風景より、《クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会(スイス)》

 本展では、代表作であるインスタレーション《クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会》から9点が展示室に浮かぶ。

 本作は、1851年に開催された世界初の万博、ロンドン万国博覧会の会場としてハイドパークに建てられた全面ガラス張りの巨大建造物「クリスタルパレス(水晶宮)」に由来するもの。現在、世界で原発による発電を行っている国は32あり、ふたりはそのすべてを制作。一点一点に原発保有国名がつけられており、サイズはその国の原発からつくり出される電力の総出力規模(メガワット:IAEA資料参考)に比例している。

 例えば本展では、ウクライナや北朝鮮、韓国、スイス、ベルギー、ロシアなどが並ぶが、なかでもスペースの中央に浮かぶ中国が群を抜いて巨大だ。

展示風景より、《クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会(ウクライナ)》
展示風景より、《クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会(中国)》
展示風景より、《クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会(中国)》

 地球温暖化と電力需要の拡大が進むなか、原子力発電の需要は高まりを見せている。いっぽう、原発は自然災害や人間の過ちによって、取り返しのつかない大きな被害を与える側面があることは否めない。

 米谷健+ジュリアが見せる、ウランガラス特有の妖しくも美しい緑の光は、世界中で展開される産業政策と経済発展の影に存在する問題を可視化し、問いかける。

展示風景より、《明日世界》