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2025.5.18

ミケランジェロ《キリストの復活》、大阪・関西万博で公開。ルネサンス期の至宝

大阪・関西万博のイタリア館が、ミケランジェロ《キリストの復活》の展示を開始した。展示は万博閉幕日の10月13日まで。

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

イタリア館で披露されたミケランジェロ《キリストの復活》(1514〜16)
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「アートは人生を再生する」というテーマを掲げる大阪・関西万博のイタリア館。ここに、ミケランジェロ・ブオナローティ(1475〜1564)の傑作が登場した。

 同館はルネサンス期の理想都市に着想を得たデザインとなっており、館内はイタリアの都市文化を象徴する劇場、ポルティコ(列柱廊)、広場、庭園で構成。そこにはナポリ国立考古学博物館が所蔵する紀元2世紀の彫刻《ファルネーゼ・アトラス》や、日本で二度目の展示となるカラヴァッジョの絵画《キリストの埋葬》、そしてレオナルド・ダ・ヴィンチの素描など、美術館さながらの名品が展示されている。

 この美術品の列に新たに加わったのが、日本で二度目の公開となるミケランジェロの《キリストの復活》(1514〜16)だ。

展示風景より、ミケランジェロ・ブオナローティ《キリストの復活》(1514〜16)

 同作は通常、ラツィオ州バッサーノ・ロマーノのサン・ヴィンチェンツォ・マルティーレ教会が所蔵している。高さ約2メートルのこの大理石像は、もともとローマのサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会に設置せるために、メテッロ・ヴァリがミケランジェロに制作を依頼した最初のキリスト像だという。しかしその後、キリストの顔に黒い大理石の筋が現れたことから一度放棄。その後1600年代初頭になって売りに出され、1618〜19年にかけて若きベルニーニが完成させたと推測されている。

 キリスト復活の瞬間を象徴する本作は、キリストが右手に力強く十字架と縄を抱く姿を表している。よく見ると手には釘、胸の下には槍で突かれた傷跡が残っており、縄も相まって、十字架から降ろされた後であることがわかる。

展示風景より、ミケランジェロ・ブオナローティ《キリストの復活》(1514〜16)

 イタリア館政府代表のマリオ・ヴァッターニは今回の展示について、「(復活のキリスト)を大阪にお届けすることで、日本やアジアの皆様に深い意味を持つ傑作をご鑑賞いただくとともに、イタリアの新たな旅のかたちを提案したいと考えています。美と文化を堪能しながらも、あまり知られていない本物の地域を訪れる旅です」と語っている。

 極めて多彩な芸術があるローマ。そのなかからこの1点が選ばれた背景には、ミケランジェロという世界的なマエストロを紹介するだけでなく、バッサーノ・ロマーノという小さな村にもこのような秀作が秘められているということを伝えるという狙いもあったという。

 美術館ではない場所で、このような長期間にわたってミケランジェロの作品が展示されるのは異例のことだ。この機会をぜひお見逃しなく。