2025.5.29

「HERALBONY Art Prize 2025 Exhibition」が東京・丸の内で開催へ。アートと社会の新たな接点

障害のある作家たちの創造性を、社会のなかで輝かせることを目的に創設された国際アート賞「HERALBONY Art Prize」。その第2回展となる「HERALBONY Art Prize 2025 Exhibition Presented by 東京建物|Brillia」が、5月31日より三井住友銀行東館1Fアース・ガーデンで開催される。

「HERALBONY Art Prize 2025 Exhibition Presented by 東京建物|Brillia」展の展示風景より、グランプリ受賞作品であるエヴリン・ポスティック《La Reine Charlotte(シャーロット王妃)》
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 株式会社ヘラルボニー(以下、ヘラルボニー)が主催する国際アートアワード「HERALBONY Art Prize 2025 Presented by 東京建物|Brillia」。同賞において、グランプリをはじめとする各賞の受賞者および最終審査進出作家、総勢61名による全65点の作品を紹介する展覧会「HERALBONY Art Prize 2025 Exhibition Presented by 東京建物|Brillia」が、5月31日より三井住友銀行東館1Fアース・ガーデンで開催される。

 HERALBONY Art Prizeは、障害のある作家を対象に、プロ・アマチュア、年齢、国籍を問わず、創作の力を社会に届けることを目的として2024年に創設された国際アート賞である。審査には国内外のキュレーターや美術関係者が参加し、受賞作品はグランプリ、審査員特別賞、そして企業との協働を想定した「企業賞」で構成される。

 第2回となる本年は、65の国と地域から1320名の作家が応募し、応募総数は2650点にのぼった。グランプリには、フランス出身のアーティスト、エヴリン・ポスティックによる《La Reine Charlotte(シャーロット王妃)》が選出された。ポスティックには、賞金300万円が授与されるほか、ヘラルボニーとの作家契約を締結。今後は国内外のライセンス展開や展示を通じて、作品がさらに広く発信される予定だという。

松田崇弥・松田文登(ヘラルボニーのCo-CEO)とエヴリン・ポスティック(中央)

 審査員を務めたヘラルボニー最高芸術責任者(CAO)の黒澤浩美は、「本賞を立ち上げた当初から掲げてきた“インターナショナル”かつ“アカデミックに評価される作品を世に接続する”という理念を、今回の応募作家たちが見事に体現してくれた」と語る。また、「美術作品の価値が“説明しやすさ”や“コンセプト重視”に偏るなか、人間の感情やつながりといった根源的なテーマを掘り下げるような作品への関心が高まっている」と現代美術の潮流の変化にも言及した。

左からエヴリン・ポスティック、クラウス・メッヘライン、ハリエット・サーモン、黒澤浩美

 本展では、グランプリのほか、審査員特別賞4名、企業賞5名の作品も展示されている。「企業賞」は、東京建物株式会社(プラチナスポンサー)、株式会社サンゲツ、株式会社ジンズ、東日本旅客鉄道株式会社、トヨタ自動車株式会社(いずれもゴールドスポンサー)の5社より授与され、受賞作品は各企業のプロダクトやサービスとのコラボレーションを通じて実社会への展開が見込まれている。

 例えば、2024年の企業賞に選ばれた作品のひとつは、トヨタ自動車と連携し、アートをまとったラリーカーとして実際の車両に応用された。また、JAL賞受賞作品は600万個の紙コップとして旅客機内で使用され、アートが日常に自然と入り込む例として注目を集めた。

展示風景より

 ヘラルボニーのCo-CEO松田崇弥・松田文登は、今回の応募と審査を経て「世界中に多様な作家が存在し、その創造性が社会に希望や可能性をもたらしてくれる」と語る。また、「HERALBONY Art Prizeを“出口のあるアワード”として機能させたい。受賞で終わるのではなく、そこから作家のキャリアが動き出すような機会をつくり続けたい」と述べ、アートと経済、社会をつなぐ取り組みの持続的展開を強調した。

 審査員のひとりであり、サンフランシスコのアート団体Creativity Exploredのディレクターであるハリエット・サーモンも、「障害の有無にかかわらず、すべての作家を“同じ土俵”で評価する姿勢が非常に重要」とコメント。「観る者が、その作家の人生背景を知ることを選べる自由もまた、この賞の寛容さを象徴している」と述べた。

展示風景より

 また、ドイツのEUWARDを運営するクラウス・メッヘラインは、「アートは社会から切り離された特別なものではなく、暮らしのなかに自然と存在しうるもの。HERALBONY Art Prizeのような賞が、日常にアートが溶け込む風景をつくっている」と語り、現代におけるアートの再定義の重要性を強調した。

 作品の鑑賞にとどまらず、社会のなかでアートがどのように共存し実装されていくか、その可能性を体感できるHERALBONY Art Prize。アートを通じて社会の多様性を再認識し、新たな表現と価値のあり方に触れる展覧会として、注目を集めそうだ。

展示風景より
展示風景より

2025年5月30日追記:一部の内容に誤りがあり、お詫びして訂正いたします。