2025.6.20

「『銀河鉄道999』50周年プロジェクト 松本零士展 創作の旅路」(東京シティビュー)開幕レポート

東京シティビューで、日本を代表するマンガ家・松本零士の没後初となる大型展覧会「『銀河鉄道999』50周年プロジェクト 松本零士展 創作の旅路」がスタートした。会期は9月7日まで。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部) クレジット=©松本零士/零時社

展示風景より
前へ
次へ

 六本木ヒルズ森タワー52階にある東京シティビューで、『銀河鉄道999』『宇宙海賊キャプテンハーロック』といった数々の名作の生みの親・松本零士(1938〜2023)の没後初となる大型展覧会「『銀河鉄道999』50周年プロジェクト 松本零士展 創作の旅路」がスタートした。会期は9月7日まで。

 松本零士は福岡県久留米市出身。6歳の頃から絵を描き始め、9歳で手塚治虫『新寶島』『月世界紳士』との出会いをきっかけにマンガを描き始める。15歳の時に投稿作『蜜蜂の冒険』が「漫画少年」の第一回漫画新人王で新人王を受賞し商業誌に掲載。独学でその技法を身につけ、1957年「少女」掲載の『黒い花びら』にて本格的なマンガ家デビューとなった。70年代にはアニメーション作品に関わることも増え、SFマンガ・アニメブームの火付け役としても知られている。マンガ執筆のほかにも数多くの団体で要職に就き、マンガ家の地位向上や宇宙・科学をテーマとした青少年教育活動にも精力的に取り組んだ。

 本展は、タイトルにもあるように『銀河鉄道999』の誕生50周年を記念し開催されるもの。会場は松本の創作の旅路をたどる3つのゾーンで構成されており、デビュー前の作品から代表作の数々に至る300点以上の直筆原画をはじめ、初公開となる貴重な資料が一堂に展示されている。

 まず来場者を迎えるのは、『銀河鉄道999』に登場する駅のプラットホームと銀河超特急999号のモニュメント。星野鉄郎とメーテルがここから旅立ったように、松本零士が歩んだ「創作の旅路」のはじまりを示唆するかのような演出だ。大型スクリーンに映し出されるアニメーションと、誰もが一度は耳にしたことがあるあの名曲とともに、特別な展示体験が幕を開ける(東京会場のみ)。

展示風景より

 ZONE1では、北九州・小倉でマンガ家を志した10代の頃から、デビューに至るまでの活動やその作品を時系列に沿って紹介している。例えば、14歳の頃の作品『虫の世界探険記』(1952)にはじまり、夜行汽車で上京した頃の松本が描いた初期の少女マンガ作品や、個性の大切さを描いた『男おいどん』(1972)、さらには初公開となるデビュー当時の貴重な「創作ノート」も公開。ここでは松本の足跡を辿りながら、その創造力の源を目の当たりにすることができるだろう。

展示風景より

 ZONE2では、松本の最重要作『銀河鉄道999』にフォーカスし、様々な視点から掘り下げることを試みる。「宇宙」「女性」「メカ」といった松本作品を特徴付ける要素が、緻密な描画技術と巧みなストーリー構成によっていかに織りなされてきたのか。生と死、愛や孤独などといった深い哲学を紐解きながら、唯一無二の“創作宇宙”に迫るものとなっている。ここでは第1話の貴重な原画をはじめ、実際に使用していた画材や参考書籍、そして愛用していた帽子といった思い出の品々もあわせて展示されている。

展示風景より
展示風景より

 最後のエリアとなるZONE3では、『男おいどん』『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』などといった、松本の代表作のカラー原画が展示されている。美しい色彩と緻密な表現、そして物語のなかを生きる人物たちの表情や佇まいにはとくに注目してほしい。

展示風景より

 松本零士の卓越した創造力と、それを実現してきた表現力。これらを語るうえで欠かせない作品や資料が、この展覧会に集結していると言えるだろう。

 なお、本展は北九州市漫画ミュージアム(9月27日~2026年1月12日)をはじめ各地へ巡回予定。詳細は続報を待ちたい。