特別展「舟と人類―アジア・オセアニアの海の暮らし」(国立民族学博物館)開幕レポート
国立民族学博物館で、特別展「舟と人類―アジア・オセアニアの海の暮らし」がスタートした。会期は12月9日まで。

大阪・万博記念公園内にある国立民族学博物館で、特別展「舟と人類―アジア・オセアニアの海の暮らし」がスタートした。本展実行委員長は小野林太郎(国立民族学博物館学術資源研究開発センター・教授)。
長い人類史において、舟が登場したのはいつ頃か? その出現と本格的な利用は、ホモ・サピエンス以降に始まったことだとされている。本展では、同館が所蔵してきたアジアやオセアニアの海域世界における多様な舟や関連資料を全11章にわたって紹介。人類学/考古学的な視点を踏まえながら、人々の移動や暮らしの文化について焦点を当てるものとなっている。

ヒトが海を渡った最古の痕跡は、インドネシアの原人にまで遡るという。その人々によって初めて生み出された舟とはいったいどのようなものだったのか? 第1章「古代から受け継がれてきた舟たち」では、舟の原型とも言える筏(いかだ)や葦舟、丸木舟、牛皮舟を紹介している。地域によって異なる素材を用いられている点にも注目だ。
また、ここでは2016から19年にかけて国立科学博物館で実施された「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」についても取り上げている。我々の祖先であるホモ・サピエンスがどのような舟を用いて琉球の島々に至ることができたのかを検証したものとなる。


舟による移動はインドネシアの原人に始まり、その技術とともに様々な場所へと展開されていった。第2章「日本における古代の舟」では、日本の弥生・古墳時代頃に登場し、活用されてきた「準構造船」について、考古資料として出土した埴輪や板材を用いてその構造を読み解いていくことを試みる。


人類史上初めてベーリング海を越えてアメリカ大陸にやってきたホモ・サピエンス。その際に必須であった道具のひとつがカヌーであり、またそれは、北方圏での漁撈(ぎょろう)や狩猟にも活用されたという。第3章「北方圏の舟」では、アメリカ大陸にわたったのちに様々な形状へと進化を遂げた舟の数々を紹介している。樹皮やアザラシの皮といった舟の素材にも注目だ。
