「日本画聖地巡礼2025 -速水御舟、東山魁夷から山口晃まで-」(山種美術館)開幕レポート。「日本画」を通じて楽しむ名所巡り
日本画の画題となった土地や画家と縁の深い場所を「聖地」とし、現地の写真とあわせて展示する特別展「日本画聖地巡礼2025 -速水御舟、東山魁夷から山口晃まで-」がスタートした。会期は11月30日まで。

東京・広尾の山種美術館で、特別展「日本画聖地巡礼2025 -速水御舟、東山魁夷から山口晃まで-」が11月30日まで開催中だ。本展監修は山下裕二。担当学芸員は髙島千広(山種美術館 学芸員)。
「聖地巡礼」とは、本来宗教上の聖地を訪ね回ることであるが、現代においては映画やアニメの舞台となった地を訪れることを指すことが多く、昨今では後者の意味合いで使われることのほうが多い印象だ。同館では、画題となった土地や、画家と縁の深い場所を「聖地」とし、その土地が描かれた作品と、現地の写真をあわせて展示する「日本画聖地巡礼」展を2023年に初開催。今回はそのシリーズ第2弾であり、速水御舟や東山魁夷といった昭和を代表する日本画家たちの作品から、現在活躍中の画家・山口晃による作品、そして「海外の聖地」にまで視野を広げることで装いを新たに展開されるものとなっている。
会場は大きく分けて2章の構成だ。第1章では、北海道から沖縄に至るまでの各地で描かれた日本画を紹介。描いた画家の目を借りながら、様々な「聖地」を体験することができる。例えば、岩橋英遠《カムイヌプリ》は、北海道東部にある摩周岳(カムイヌプリ、神の山)を描いたものだ。付近にある摩周湖から立ち上る霧やそれによる空気の屈折までもが表現されており、非常に幻想的な情景を生み出している。


展示室には横山大観の《飛瀑華厳》や竹内栖鳳の《潮来小暑》といった名品が並ぶほか、最奥には奥田元宋による《奥入瀬(秋)》が現れる。奥入瀬の紅葉や急流が元宋が得意とする赤の表現を用いて大パノラマで描かれており、鑑賞者の没入感を誘う。
また、京都の椿寺地蔵院の名木「五色八重散椿」を描いた速水御舟の《名樹散椿》は、昭和期において初の重要文化財に指定されたという名作だ。二曲一双の画面を用いたこの作品と、モチーフとなった名木を見比べることで、御舟の画面づくりの妙にも気づくことができるだろう。

