「art venture ehime fes 2025」が開幕。藝大と協働で落合陽一ら24組が参加
愛媛県と東京藝術大学の共同開催による「art venture ehime fes 2025」がスタートした。東京藝術大学の学長である日比野克彦と、元サッカー日本代表監督で株式会社今治 夢スポーツの代表取締役である岡田武史との会話に端を発するという芸術祭をレポートする。

アートで見つける地域の“らしさ”
会場は愛媛県内4エリアの8ゾーン。「アートは冒険だ!」というコンセプトのもと、「ここにある豊かさ」をテーマに、落合陽一×笹村白石建築設計事務所や古武家賢太郎と尾崎強志によるIGIRISほか、国内外24組のアーティストがサイトスペシフィックな作品を展開する「art venture ehime fes 2025」が10月18日よりスタートした。

古くから友人関係にあるアーティストで東京藝術大学学長の日比野克彦と、元サッカー日本代表監督で、現在はJ2に所属するFC今治の運営会社である株式会社今治. 夢スポーツで代表取締役を務める岡田武史との会話が発端となったという。
「地球上で人間だけが爆発的に増加して人口88億人となり、このまま物質的成長だけ求めていたら地球がパンクするか、人類の奪い合いになってしまう」「物質的な豊かさと異なる幸せを提供できるのがスポーツとアートであり、文化的成長によって幸せになれることを日本は表現できるはずだ」と考えた岡田が、アートによって地域の幸福度が高まることを示す取り組みに協力してほしいと、日比野にもちかけた。
日本各地に地域コミュニケーターを配置し、地域とアートの接続を試みてきた日比野と東京藝術大学の取り組みは、岡田の発想とその根底においてシンクロする。岡田が愛媛県知事の中村時広を日比野に紹介するとふたりは意気投合し、アートを通して人と人、人と地域をつなぎ、新たな価値や関係を社会に広げるアート・コミュニケーション・プロジェクトとして「art venture ehime」をスタートすることが決まった。そして、プロジェクトの主体となるコミュニケーター「ひめラー」が、愛媛にやってきた参加アーティストを案内し、サイトスペシフィックな作品の数々が生み出された。


「地域を元気にすることによって日本を立て直す、地方創生という言葉があります」と、東京藝術大学が愛媛県と共同で取り組む意図について日比野克彦が説明する。「地域性を出す、土地らしさを出すことが求められていますが、“らしさ”を発揮するのはアートが得意とするところ。地域らしさというのは、究極的にいえばそこの土地に住んでいる人らしさです。それを打ち出すために東京藝大では、各地で共創拠点プロジェクトを開始し、その一環として愛媛県と『art venture ehime』を進めています」(日比野)。

そして、アートを通して地域らしさを打ち出し、同時にその結果として、地域の幸福度が上がるのではないか。そんな見通しのもとでプロジェクトが展開し、今回のフェスティバルの開催につながっている。
「我々は『文化的処方』という言葉を打ち出していて、健康の認識のアップデートに取り組んでいます。心身ともに健康であること。身体の健康は人間ドックで検査できますが、心の健康のために誰が何を処方してくれるのかは非常に曖昧です。東京藝大では、京都大学の疫学の先生たちとデータをとり、文化と接することで健康になれるというエビデンスを見つけていこうと動き始めました。それは難しくて長い道ですが、研究を始めたこと自体にインパクトがある。目的はその価値を共有することであり、数値化することはあくまでも手段です。関わる人たちがそうした実感をもつことができれば、文化的処方の価値を評価することにつながってくるので、走り出した意義は大きいと思っています」(日比野)。
「art venture ehime」はその実践の場のひとつとなっている。会場のひとつであり、開会式が行われた愛媛県立とべ動物園の展示から、「地域らしさ」を打ち出すアート表現の数々を見ていきたい。
























































