有識者が選ぶ2024年の展覧会ベスト3:はむぞう(アートウォッチャー)
数多く開催された2024年の展覧会のなかから、有識者にそれぞれもっとも印象に残った、あるいは重要だと思う展覧会を3つ選んでもらった。今回はアートウォッチャーのはむぞうによるテキストをお届けする。
渡辺志桜里「BLUE」(SACS/2月23日~3月10日)
本展は人間と自然の関係に着目する現代美術家・渡辺志桜里がCCCアートラボ「Might Be Classics」の第3弾としてSACSで開催した展覧会である。皇太子明仁親王(現上皇)が1960年(昭和35年)に米国シカゴの水族館から持ち帰ったブルーギルの国内異常繁殖問題をメインモチーフに、2種の映像と3種の彫刻を配置したインスタレーションによって、「種」の視点から人間の多様性について考察している。象徴的な青色に彩られて渋谷の谷底で幽かに輝くこの展示は、国家による外来種の排除と環境保護の関係を通じて鏡面反射的に、現代を生きる我々人間のさまざまな境界を照射する。