今津景　タナ・アイル

　東京オペラシティ アートギャラリーで「今津景　タナ・アイル」が開催される。

　今津景（1980〜）は、インターネットやデジタルアーカイブといったメディアから採取した画像を、コンピュータ・アプリケーションで加工を施しながら構成、その下図をもとにキャンバスに油彩で描く手法で作品を制作。今津は2017年に、インドネシアのバンドンへ制作・生活の拠点を移した。

　近年の作品は、インドネシアの都市開発や環境汚染といった事象に対するリサーチをベースにしたものへと移行している。同時に、今津は現在起きている問題の直接的な表現にとどまらず、様々なアーカイブ画像を画面上で結びつけることで、インドネシアの歴史や神話、生物の進化や絶滅といった生態系など複数の時間軸をかさね合わせ、より普遍性を持つ作品へと発展させている。

　本展のタイトルにある「タナ・アイル」とは、インドネシア語で「タナ（Tanah）」が「土」、「アイル（Air）」が「水」を指し、ふたつの言葉をあわせると故郷を意味する言葉になる。現在生活するインドネシアと自身のルーツである日本というふたつの土地での経験と思考にもとづく今津の作品は、鑑賞者に対しても自らが生きる場所について考える契機となるだろう。