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2025.4.1

谷口吉郎建築の愛知県陶磁美術館がリニューアルオープン。何が変わった?

1年9ヶ月の修繕工事を経て、愛知県陶磁美術館が4月1日にリニューアルオープン。再開に伴い「新シュウ蔵品展」や新たな常設展も披露された。

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

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 昭和モダニズム建築の巨匠・谷口吉郎が設計した愛知県陶磁美術館が1年9ヶ月の修繕工事を経て、4月1日にリニューアルオープンを迎えた。

 同館は日本最大級の窯業地である愛知県瀬戸市に位置しており、愛知県政100年記念事業として1978年に愛知県陶磁資料館として開館。2013年に現在の名称に変更された。日本やアジアをはじめとする世界各地の様々なやきものを蒐集し、現在では重要文化財3点を含む約8000点のコレクションを擁する、世界的に見ても屈指の陶磁専門ミュージアムだ。

1階ロビー

 開館以来もっとも大規模なものとなった今回のリニューアルでは何が変わったのだろうか?

 まず天井部分は耐震改修工事が実施。特徴的な照明は、谷口によるオリジナルの意匠を引き継いだかたちでLED化された。

吹き抜け空間
1階廊下部分
地下フロア

 本館1階ロビーのトイレに瀬戸・常滑の陶芸作家が制作した洗面鉢を設置。さらに、ラウンジは床面の絨毯を張替え、明るく開放的な空間に変わりキッズコーナーも新たに設けられている。 

ラウンジ
キッズコーナー

刷新された展示エリア

 また展示室をはじめとする鑑賞エリアでは床と壁を修繕。加えて新規展示ケースを導入することで、映り込みの少ない鑑賞が可能となった。この展示室では、リニューアルオープンを記念し、「新シュウ蔵品展-美術館シュウシュウのあれこれ」が5月6日まで開催されている。

「新シュウ蔵品展-美術館シュウシュウのあれこれ」展示風景より

 本展は、美術館の根幹をなす役割である「蒐集」に着目。令和に入ってから新収蔵した作品のなかから、秀でた「秀(シュウ)」、探し求める「捜(シュウ)」、受け取る「受(シュウ)」、修復が施された「修(シュウ)」など、様々な「シュウ」を切り口に、181件の作品が紹介されている。わかりやすいテーマながら、美術館がいかに機能しているのかも十分に説明されるリニューアルにふさわしい展示だ。

「新シュウ蔵品展-美術館シュウシュウのあれこれ」展示風景より
「新シュウ蔵品展-美術館シュウシュウのあれこれ」展示風景より
「新シュウ蔵品展-美術館シュウシュウのあれこれ」展示風景より
「新シュウ蔵品展-美術館シュウシュウのあれこれ」展示風景より
「新シュウ蔵品展-美術館シュウシュウのあれこれ」展示風景より

常設展も一新

 常設展も大幅にリニューアルされた。2階の「愛陶コレクション展『世界はやきものでできている』」では、コレクションの根幹をなす「日本のやきもの」、「中国のやきもの」、そしてヨーロッパやタイ、韓国、プレ・インダス文明を含む「世界のやきもの」など様々なテーマで構成。これまでよりも展示資料数を絞ることで、より見やすい展示構成となった。またキャプションには学芸員による解説のほかキャッチコピーも添えられており、各資料と鑑賞者の距離を縮める工夫も見られる。さらに、年間3回程度の展示替えを行うことで、リピーターを狙う。

愛陶コレクション展「世界はやきものでできている」展示風景より
愛陶コレクション展「世界はやきものでできている」展示風景より
愛陶コレクション展「世界はやきものでできている」展示風景より

 特集展示では、愛知県西部に位置し、5世紀から14世紀初頭まで約900年間操業された「猿投窯(さなげよう)」のほか、愛らしい動物をかたどったやきものなどを紹介。また、スマートフォンでQRコードを読み取ることでやきものの3Dスキャンデータを楽しむことができる新たな鑑賞のかたちも提示している。

特集展示より
特集展示より
特集展示より

 さらに、手持ちのスマートフォンでコレクション展の作品解説を読んだり、音声で聞いたりしながら展覧会を楽しめる音声ガイドアプリ「ポケット学芸員」も導入されており、より気軽に陶磁の世界に没入できるようになったのも嬉しい。

 開館から役割半世紀を経てもなお、色褪せない清廉さを称える愛知県陶磁美術館。建築を含め、これを機に訪れてみてほしい。

 なお同館は、今年開催される国際芸術祭「あいち2025」(9月13日〜11月30日)のメイン会場のひとつとなる。谷口建築でどのような作品が展開されるのか、期待したい。

地下展示室