中島晴矢「ゆーとぴあ」

　WHITEHOUSEで、中島晴矢の3年ぶりとなる個展「ゆーとぴあ」が開催される。

　中島は1989年神奈川県生まれ。現代美術、文筆、ラップなど、多様な場や人と関わりながら領域横断的な活動を展開している。美学校「現代アートの勝手口」の講師であり、プロジェクトチーム「野ざらし」のメンバー。中島は活動の初期から、日本文学、サブカルチャー、都市論等を補助線に、それらの意味構造を卓抜した想像力によって炙り出し、現代的な問題系として総合し作品化してきた。

　本展は「ユートピア」をテーマに掲げ、モチーフは「2025 大阪・関西万博」の開催地である人工島・夢洲から着想を得たという。ユートピアとは16世紀にトマス・モアが生み出した「どこにもない架空の国」を表す概念。その後も都市計画や社会思想や文学のかたちをとって、各時代の状況を批判的に反映した一連の作品が描かれてきた。

　そのうえで参照するのは、80年代に一世を風靡したホープとピースからなるお笑いコンビ「ゆーとぴあ」によるゴムパッチンだ。本展ではその寄席演芸を「〈分断〉と〈紛争〉の時代」である現代社会のアレゴリーとして提示する。作品の舞台は大阪北港の舞洲、日本橋の中洲、荒川と隅田川の分岐点にあたる中之島といったトポスだ。風景映画、パフォーマンス、ビデオ・アートといった文脈に棹さす映像作品を軸に「世界に〈希望〉と〈平和〉をもたらす未来のユートピア像」を炙り出すことを試みる。