EXHIBITIONS

青木千絵「融体化する⾝体」

2021.11.13 - 12.18

青木千絵 BODY 21-1 2021 漆、麻布、スタイロフォーム H37×W97×D68cm 画像提供=現代美術 艸居 写真=今村裕司

青木千絵 BODY 21-3 2021 漆、麻布、スタイロフォーム H120×W60×D72cm 画像提供=現代美術 艸居 写真=今村裕司

青木千絵 Drawing_#01 2021 紙、木炭 H51×W35.5cm 画像提供=現代美術 艸居 写真=今村裕司

青木千絵 Drawing_#06 2021 紙、木炭 H51×W35.5cm 画像提供=現代美術 艸居 写真=今村裕司

 現代美術 ⾋居では、⻘⽊千絵の個展「融体化する⾝体」を開催している。

 ⼤学時代に漆と出会い、その不思議な質感を持つ艶に魅了され、漆での創作活動を始めた⻘⽊。「漆を⽤いることで、⾃分の中にある得体の知れない『何か』を表現できるのではないか」と、漆のミステリアスな漆⿊を普遍的な⾝体と融合させることにより、孤独や葛藤という⼈間の内⾯に渦巻く複雑な感情世界を表現してきた。具象と抽象が組み合わされ、漆の奥深い艶が特徴的な作品は、⼈間表現の追求という⻘⽊の創作姿勢を明⽰してくれる。

 本展では、漆作品「BODY」の新作4点と新作ドロ ーイングが展⽰されている。

 ⻘⽊の代表シリーズとも言える「BODY」の制作は17年目に入る。⼈間の内⾯世界を表現するために、具象である⾝体と抽象の塊を融合させた独⾃のスタイルは、漆という⼯芸材料を⽤いながらも、コンテンポラリーアートとしての意味合いを強く有している。⻘⽊は⾃らの初期作品を表すのにあたり、「他者からの遮断」というキーワードを⽤いる。それは何層にも重なり強固になる漆のシェルターに守られた⼈の姿であり、鏡⾯のような漆の表⾯が周囲を跳ね返すバリアのようだったと作家は振り返っている。また、その姿は何処か物哀しいポーズで、社会のなかで感じる違和感から⾃分を守ろうとしているようでもあったと言う。

 近年の「BODY」シリーズは、上半⾝の姿が現れだし抽象部分と融体化するようになってきた。また、周りを遮断するかのようだった初期作品とは異なり、周囲を吸収しながら鑑賞者と⼀体感を得るような存在へと変わり始めている。本展で発表する最新作《BODY 21-1》は、宇宙や⽣命といった⼤きな存在と⾃⾝が融合していくイメージで、⾝体を⼩さく丸め、深海に潜り込んでいく感覚を表現した作品。漆⿊の深い艶と乾漆技法(⿇布や和紙を漆で貼り重ねてかたちづくる⽅法)特有の穏やかな丸みを活かすため、⾜と塊の起伏のつながりが美しく⾒えるよう意識したことで、より⾝体の融体化が印象的な作品となっている。

 宇宙や⾃然と⽐べた時の⼈間という存在の⼩ささ、しかしいっぽうで複雑な精神世界を有し、尊くも儚い存在である⼈間。⻘⽊は、⼤きな変化のなかで多様化がますます進む現代社会において、⾃分⾃⾝を⾒失いそうになりながらも⾃分の⼼と向き合って⽣きていく姿を、漆という美しく堅牢な素材を⽤いて表現している。融体化という⻘⽊作品における新たな展開と、乾漆ならではの優しく奥深い魅⼒をこの機会に鑑賞してほしい。