2025.3.16

プシュパマラ・Nの個展「Dressing Up: Pushpamala N」がシャネル・ネクサス・ホールで開催。女性像と国家の歴史にイメージで迫る

東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで、インド出身のアーティスト、プシュパマラ・Nの個展「Dressing Up: Pushpamala N」が開催される。会期は6月27日〜8月17日。

プシュパマラ・N「Return of the Phantom Lady」(2012) ©PushpamalaN
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 東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで、インド出身のアーティスト、プシュパマラ・Nの個展「Dressing Up: Pushpamala N」が開催される。会期は6月27日〜8月17日。

プシュパマラ・N「Phantom Lady or Kismet」(1996-98)より ©PushpamalaN

 プシュパマラは、インドのバンガロール(現ベンガルール)を拠点に活動するアーティスト。当初、彫刻家として始まった創作活動を写真や映画へと移行させ、1990年代半ばから自らがさまざまな役柄に扮して示唆に富んだ物語をつくり上げるフォト・パフォーマンスやステージド・フォトの創作を始めた。その作品は、女性像の構築や国家の枠組みを探求するもので、美術史、アーカイヴ資料、大衆文化から引き出された象徴的なイメージや原型を再現している。

プシュパマラ・N © PushpamalaN

 プシュパマラの制作は基本的に共同作業で行われる。作家が共鳴する既成のイメージを特定し、自身のスタジオで再現。友人やアマチュアのキャスト、技術者へ指示をし、細部まで計算されたシーンを制作。アナログで演劇のように構成された演出が作為性を強調させ、そのイメージを成立させている枠組みに意識を向けさせる。このようにしてプシュパマラ・Nは、歴史的・文化的な背景を持つイメージをあえて再現することで、その成り立ちを浮き彫りにし観る者に「真実とは何か」を問いかけているといえる。

プシュパマラ・N「Return of the Phantom Lady」(2012) ©PushpamalaN

 本展では「Phantom Lady or Kismet」(1996-98)、「Return of the Phantom Lady」(2012)、「The Navarasa Suite」の3シリーズを展示。「Phantom Lady or Kismet」はプシュパマラがフォト・パフォーマンスという表現手法を探求し始めた最初の作品シリーズだ。25枚のモノクロ写真で構成された本シリーズは、フィルム・ノワール時代の映画的描写をパロディ化している。また、1930年代から40年代にかけて、俳優やスタントとして活躍したインド女性たちへのオマージュを込めているという。

プシュパマラ・N「Phantom Lady or Kismet」(1996-98)より ©PushpamalaN
プシュパマラ・N「Phantom Lady or Kismet」(1996-98)より ©PushpamalaN

 「Return of the Phantom Lady」は「Phantom Lady or Kismet」の続編であり、現代のインド・ムンバイを舞台に、殺人、陰謀、悪事の巣窟を解き明かしていく。ミステリー小説のカバーページの大胆な色調を思わせるカラー写真21枚のシリーズ作品で、プシュパマラが再び演じる「ファントムレディ」が歴史ある映画館や古びたカフェを巡りながら孤児の少女を救出すべく奔走する。

プシュパマラ・N「Return of the Phantom Lady」(2012) ©PushpamalaN

 「The Navarasa Suite」は、インド美学における9つの感情「ラサ」、すなわち「Sringara(恋情)」「Adbhuta(驚き)」「Hasya(ユーモア)」「Bhayanaka(恐怖)」「Bhibhatsa(嫌悪)」「Karuna(悲しみ)」「Raudra(怒り)」「Veera(勇敢)」「Shanta(寂静)」をもとに、緻密な演出が組まれた一連のセルフ・ポートレイト作品だ。

プシュパマラ・N「The Navarasa Suite」(2000-03)より ©PushpamalaN
プシュパマラ・N「The Navarasa Suite」(2000-03)より ©PushpamalaN

 なお、本展の関連展示として「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」の期間中、「Dressing Up: Pushpamala N presented by CHANEL Nexus Hall」と題して、「The Arrival of Vasco da Gama」に加え「Mother India」「Avega~The Passion」といったシリーズを展示する展覧会も開催される。会期は4月12日〜5月11日。