2025.12.26

今週末に見たい展覧会ベスト5。アニー・モリス&イドリス・カーンからソル・ルウィット、小村雪岱まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー」展の展示風景より
前へ
次へ

もうすぐ閉幕

アニー・モリス、イドリス・カーン「A Petal Silently Falls」(KOTARO NUKAGA 六本木/KOTARO NUKAGA天王洲) 

KOTARO NUKAGA(六本木)の展示風景 Photo by Osamu Sakamoto, Courtesy of KOTARO NUKAGA

 KOTARO NUKAGA六本木とKOTARO NUKAGA天王洲で、アニー・モリスとイドリス・カーンの二人展「A Petal Silently Falls」が12月26日まで開催されている。インタビュー記事はこちら

 アニー・モリスとイドリス・カーンは、ともに1978年イギリス生まれ。モリスは、色彩豊かな球体が積みかさなる彫刻「Stack」シリーズで知られる。作品は、流産という個人的体験に端を発し、深い悲しみを希望へと変換する過程で制作されたもの。いっぽうでカーンは、パキスタン系の父とイギリス人の母を持つアーティストである。コーランの詩句や写真などのイメージをかさねる手法により、時間の堆積や記憶の複雑さを視覚化する。

 本展では、六本木と天王洲にあるKOTARO NUKAGAの2会場にて、それぞれの作家による作品を紹介している。個人として国際的評価を築きながらも、共同制作や二人展を通じて芸術的な共鳴を育んできた両者の実践に注目したい。

会期:2025年10月29日~12月26日
会場:KOTARO NUKAGA 六本木/KOTARO NUKAGA天王洲
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2階/品川区東品川1-33-101F TERRADA ART COMPLEX Ⅱ
電話番号:03-6721-1180
開館時間:11:00~18:00
料金:無料

リー・ベー「THE IN-BETWEEN」(ペロタン東京) 

Lee Bae Brushstroke S6 2025 bronze 106 × 62 × 56 cm Courtesy of the artist and Perrotin

 ペロタン東京で、リー・ベーによる個展「THE IN-BETWEEN」が12月27日に閉幕する。

 リー・ベーは1956年韓国・チョンド生まれ。パリとソウルを拠点に活動し、木炭やカーボンブラックを用いたドローイング、絵画、彫刻、インスタレーションなど、多様な領域で制作を行ってきた。初期には未加工の木炭を素材に作品を構成し、現在はカーボンブラックや木炭インクを用いた筆致の記録へと表現を広げている。

 本展では、筆の運びをもとにブロンズで制作された彫刻作品シリーズ「Brushstrokes」を展示。床や壁に設置された作品、天井から吊るされた作品などがあり、それぞれが多方向に伸びる線的構造を形成している。また、別の展示室では、韓国の稲田で撮影された映像作品を上映。リー・ベー本人が代掻きの動作を行う様子を記録した映像であり、泥土の上を歩き、水面を掃く一連の動作が収められている。箒を使った作業や身体の動きが、撮影地の風景とともに映し出される。

会期:2025年11月5日~12月27日
会場:ペロタン東京
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1階 ペロタン東京
電話番号:03-6721-0687
開館時間:11:00~19:00
料金:無料

ネルソン・ホー「鏡中花、水中月 - A Mere Reflection of Flower and Moon」(√K Contemporary

メインビジュアル

 東京・新宿の√K Contemporaryで、マレーシア出身のアーティスト、ネルソン・ホーによる個展「鏡中花、水中月 – A Mere Reflection of Flower and Moon」が12月27日まで行われている。

 ホーは多摩美術大学で日本画を学び、岩絵具による絵画をはじめ、陶芸、写真、インスタレーションなど多様な素材を横断しながら、LGBTQの経験、宗教との葛藤、メンタルヘルスといった現代的テーマに取り組んできた。作家自身が「イスラム宗教色の強いマレーシアに育ったゲイの私にとって、美は宗教に代わるものでした」と語るように、本展は濃密な宗教文化のなかで育ったクィア当事者にとって、“美”がいかに精神的支えとなり得るのかを探る試みでもある。

 本展では、新作ペインティングや立体作品、インスタレーションに加え、イサム・ノグチ、水之江忠臣、柳宗理など日本を代表するデザイナーの家具を展示空間に取り入れる。装飾を排し、機能美を追求した家具とホーの作品を併置することで、会場全体を「クィアの聖域」として再構成し、鑑賞者が座る・立ち止まるといった身体的行為を通して空間との新たな関係性を生み出す構成が試みられている。 

会期:2025年12月6日~12月27日
会場:√K Contemporary
住所:東京都南町6
電話番号:03-6280-8808
開館時間:13:00~19:00
料金:無料

今週開幕

「ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー」(東京都現代美術館) 

ソル・ルウィット ストラクチャー(正方形として1, 2, 3, 4, 5) 1978-80 滋賀県立美術館蔵
© 2025 The LeWitt Estate / Artists Rights Society (ARS), New York. Courtesy Paula Cooper Gallery

 東京・清澄白河の東京都現代美術館で、日本の公立美術館では初となるソル・ルウィット(1928〜2007)の個展「ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー」が開幕した。レポート記事はこちら

 ルウィットは1960年代後半、目に見える作品そのものよりも、作品を支えるアイデアやそれが生み出されるプロセスを重視する試みによって、芸術の在り方を大きく転換してきた。ルウィットの指示をもとに、ほかの人の手で壁に描かれるウォール・ドローイング、構造の連続的な変化を明らかにする立体作品などの仕事は「芸術とは何でありうるか」という問いを投げかけるものであった。

 本展では、ウォール・ドローイング、立体・平面作品、アーティスト・ブックなどを展示。これらの代表作の数々を通じて、既存の枠組みや仕組みに再考を促し、別の構造への可能性を開こうとしてきたルウィットの思考の軌跡をたどるものとなる。

会期:2025年12月25日~2026年4月2日
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1
電話番号:03-5245-4111(代表) 
開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、1月12日、2月23日は開館)、年末年始(12月28日~1月1日)、1月13日、2月24日
料金:一般 1600円 / 大学生・専門学校生・65歳以上 1100円 / 中学・高校生 640円 / 小学生以下 無料

「密やかな美 小村雪岱のすべて」(あべのハルカス美術館

小村雪岱 青柳 1924年頃 埼玉県立近代美術館蔵 前期展示

 あべのハルカス美術館で「密やかな美 小村雪岱のすべて」が12月27日にスタートする。

 小村雪岱は、大正から昭和初期にかけて活躍した美術家。日本画、書籍の装幀、挿絵、映画の美術考証、舞台装置まで幅広く手がけ、「昭和の春信」と称された。

 本展では、雪岱の代表作を網羅し、画業を「人」とのつながりから再考する。泉鏡花をはじめとする文学者や松岡映丘など日本画家、出版人や舞台人との交流と協働に注目し、作品世界がどのように生み出されたかを紹介する。

 前期・後期で大幅な入れ替えを行い、会期を通して約600点の作品や資料を展示する。日本画家としての活動にも注目し、初期から晩年までの肉筆作品を展覧。装幀の仕事では、1914年の泉鏡花作『日本橋』での装幀家デビュー以降、鏡花本を中心に200冊を超える装幀本を制作した。初期から晩年までの装幀本を展観し、装幀の仕事を紹介するのも本展の見どころだ。

会期:2025年12月27日~2026年3月1日
会場:あべのハルカス美術館
住所:大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
電話番号:06-4399-9050
開館時間:10:00~20:00(月土日祝〜18:00)※入館は閉館30分前まで
休館日:12月31日、1月1日、2月2日
料金:一般 1800円 / 大学・高校生 1400円 / 中学・小学生 500円