2025.5.14

展覧会と出会いなおす一冊。『歌は待っている 風と土と「ひとひのうた」と』が刊行

「みちのおくの芸術祭山形ビエンナーレ2024」で行われた周遊型展覧会「ひとひのうた」を起点としながら、「うた」をテーマに視覚表現と言語表現が展開する、新しい展覧会の可能性の提案をする一冊。

歌は待っている 風と土と「ひとひのうた」と
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 昨年、山形県山形市の蔵王温泉と東北芸術工科大学を舞台に開催された「みちのおくの芸術祭山形ビエンナーレ2024」。そのなかで行われた周遊型展覧会 「ひとひのうた」を起点としながら、「うた」をテーマに視覚表現と言語表現が展開する、新しい展覧会の可能性の提案をする一冊が刊行される。

 本書『歌は待っている 風と土と「ひとひのうた」と』は、同展総合キュレーターを務めた東北芸術工科大学准教授・小金沢智による初の編著。グリーンシーズンの蔵王温泉を中心に、屋内6ヶ所、屋外22ヶ所で開催された展覧会を、蔵王温泉の風土の風景写真とともに紹介。たんなる図録のかたちではなく、現地を周遊しているかのようにページが構成されているのが大きな特徴だ。

 また本書には、小金沢による開催に至るまでの2年弱の期間の日記や蔵王温泉の風土をめぐるエッセイ、キュレーターとシンガーソングライター・前野健太、デザイナー・平野篤史、アーティスト・大和由佳、蔵王温泉の旅館の女将・岡崎直子らとの対談なども収録。またキュレーターによる書き下ろしの歌も収められている。「展覧会を本にまとめるということはどういうことか?」という問いを発するとともに、読者が本を通して展覧会と出会いなおす可能性を示す一冊だ。