2025.6.4

アムステルダム国立美術館、約200年前のコンドームを展示。性と印刷文化の交差点に光を当てる

1830年頃につくられたとされる希少なコンドームが、オランダのアムステルダム国立美術館で一般公開された。

作者不詳 プリント入りコンドーム 1830頃 F.G.ワラー基金より取得
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 オランダのアムステルダム国立美術館が、6月3日より約200年前に製造された希少なコンドームを公開している。

 推定1830年頃につくられたこの避妊具は、羊の盲腸を素材にしたと考えられており、当時の売春宿の記念品として使われていた可能性がある。現存が確認されている同様の品は世界にわずか2点のみとされ、極めて貴重な歴史資料だ。

 コンドームの表面には、修道女と3人の聖職者を描いたエッチングが施されている。修道女は脚を開いて椅子に座り、指をひとりの聖職者に向けている。聖職者たちは性的興奮の状態を示すようにローブを持ち上げており、下には「Voilà mon choix(これが私の選択)」というフランス語の文言が添えられている。この表現は、ギリシャ神話の「パリスの審判」の風刺であると同時に、聖職者の独身制を皮肉る意図も読み取れる。

作者不詳 プリント入りコンドーム 1830頃
F.G.ワラー基金より取得 Photo by Rijksmuseum, Kelly Schenk

 このコンドームは、同館の版画室が約6ヶ月前にオークションで落札したもので、F.G.ワラー基金の支援により購入された。同館は、このコンドームの収蔵によって、これまで所蔵資料であまり扱われてこなかった19世紀の性や売春といったテーマに焦点を当てることが可能となったとしている。当時、梅毒などの性感染症や望まない妊娠への恐れが広がるなかで、人々は快楽と健康のはざまで揺れていた。このコンドームは、そのような時代背景を反映し、性的健康と風俗文化の「明と暗」の両面を象徴する資料として注目される。

 展示は同館の版画室にて行われており、11月末まで公開予定。この版画室には、紙媒体を中心におよそ75万点の版画、素描、写真が所蔵されているが、コンドームに印刷された作品が収蔵されるのは今回が初めてとなる。展示ではコンドームのほか、19世紀の性と売春をテーマにした版画、ドローイング、写真など複数の作品があわせて紹介されている。

作者不詳 プリント入りコンドーム 1830頃
F.G.ワラー基金より取得 Photo by Rijksmuseum, Kelly Schenk