2025.6.19

ミラノ・コルティナ冬季オリンピック/パラリンピックの公式アートポスターが発表。10名のイタリア人アーティストが参加

来年開催されるミラノ・コルティナ冬季オリンピック競技大会。その公式アートポスター発表された。

アンドレア・フォンタナーリによるポスター Fondazione Milano Cortina 2026
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 来年開催されるミラノ・コルティナ冬季オリンピック競技大会/パラリンピック競技大会。その公式アートポスター発表された。

 本ポスターは、Fondazione Milano Cortinaとミラノを代表する文化機関ミラノ・トリエンナーレとの特別共同プロジェクトの一環として制作。イタリア人アーティスト10名(オリンピック5名、パラリンピック5名)によるものだ。まずはオリンピックのポスターを担当した5名を紹介したい。

 ベアトリーチェ・アリーチ(1992〜)は、人間の原始的な無意識、あるいは記憶の層に沈潜する心理的空間への回帰を主題としてきた。画面に繰り返し登場するのは、神話的・霊的象徴を帯びた女性像で、素材として用いられる貴金属とともに、中世図像の宗教性と現代的フェミニニティの交差点を提示する。

ベアトリーチェ・アリーチによるポスター Fondazione Milano Cortina 2026

 マルティナ・カッサテッラ(1996〜)の絵画は、手という身体部位に宿る象徴性と記憶性に根ざしている。繊細な線描と光の表現によって、美術史において周縁的に描かれてきた手を主題とした。 手は本作において古代的記号性、魔術的言語、生命力と官能性のメタファーとして機能し、身体性の根源へと観者のまなざしを導くことが目指されている。

マルティナ・カッサテッラによるポスター Fondazione Milano Cortina 2026

  ジョルジア・ガルツィッリ(1992〜)は、ドキュメンタリー映像を起点とする作家だ。その表現は、社会的現実と個的記憶の境界領域を探るもので、フェミニティ、疎外、不安、迷信、記憶、護符といったモチーフを交錯させながら、知覚されにくい経験の層に可視性を与えることを試みてきた。

ジョルジア・ガルツィッリによるポスター Fondazione Milano Cortina 2026

  フラミニア・ヴェロネージ(1986〜)は、素材と形式におけるヒエラルキーを排し、遊戯性と想像力に根ざしたマルチメディア的実践を行ってきた。その作品群は、テキスタイル、陶、ポリマークレイ、ガラス、ドローイング、水彩、絵画、インスタレーションなど、多様な技法・素材によって構成され、驚異と幻想の視覚言語を紡ぎ出している。

フラミニア・ヴェロネージによるポスター Fondazione Milano Cortina 2026

 マッダレーナ・テッセル(1992〜)の作品世界は、父権的秩序の不在を仮構した宇宙を描出している。多様なフェミニティが立ち上がり、作家自身が収集・編集したイメージを用いて構成される複雑な空間に配置されている。

マッダレーナ・テッセルによるポスター Fondazione Milano Cortina 2026

 パラリンピックポスターの5名は次のとおり。ロベルト・デ・ピント(1996〜)は、地中海の深層から浮かび上がるような身体を作品に繰り返し登場させる作家だ。その姿は、作家自身の分身ともいえる存在で、日焼けした肌や陰影を通して、皮膚そのもののエロティシズムを描き出す。

ロベルト・デ・ピントによるポスター Fondazione Milano Cortina 2026

 アンドレア・フォンタナーリ(1996〜)は、日常の一瞬を超写実的な眼差しで描き出す画家。その作品は、描き込みよりも引き算のアプローチによって、光と色彩の本質そのものを浮かび上がらせている。構成要素を極限までそぎ落とすことで、現実の透明な層が可視化されるような視覚体験をもたらす。

アンドレア・フォンタナーリによるポスター Fondazione Milano Cortina 2026

 ジュリア・マンゴーニ(1991〜)はイタリアとブラジルにルーツを持つアーティスト。「帰属」と「記憶の倫理性」を中心テーマとしている。絵画というメディウムを通して、特定の地理や周縁的コミュニティに紐づくアイデンティティの再構築を試み、記憶・風景・社会的位置づけの関係性を問い直す。

ジュリア・マンゴーニによるポスター Fondazione Milano Cortina 2026

 アロンネ・プレウテーリ(2001〜)は、パフォーマンス、音楽、ビデオアート、絵画など多様なメディアを横断しながら、諧謔と社会批評の交錯を軸に作品を展開してきた。その根底には、「気まずさ」「不条理」「社会的規範への挑戦」といった普遍的かつ現代的な主題が存在している。

アロンネ・プレウテーリによるポスター Fondazione Milano Cortina 2026

 クララ・ウッズ(2006〜)は、アーティスト、モチベーショナルスピーカー、アントレプレナーとして多面的に活動している。出生時の脳卒中の影響により、話す、書く、読むことはできないが、ポルトガル語、イタリア語、英語を駆使し、アートを通じて世界と対話している。 フリーダ・カーロに影響を受け、2018年にフィレンツェで初個展を開催。以来、アート・バーゼルを含む世界各地で30回以上の展覧会を開催してきた。

クララ・ウッズによるポスター Fondazione Milano Cortina 2026