丹下健三設計の名建築。解体予定の「旧香川県立体育館」、民間による再生案が始動
老朽化と耐震性の問題を理由に解体が決定された旧香川県立体育館について、民間主導による保存・再生活用を目指す正式な意向表明が行われた。

戦後日本を代表する建築家・丹下健三の設計による「旧香川県立体育館」。その保存および利活用を目指す「旧香川県立体育館再生委員会」が、7月18日付で同建築の買取等に関する正式な意向表明書を香川県教育委員会および香川県知事に提出したと発表した。これを受けて同委員会は7月23日、高松市内のホテルにて記者会見を開き、これまでの経緯や今後の事業計画について説明を行った。
旧香川県立体育館は、東京オリンピックが開催された1964年に竣工した体育館である。和船を思わせる形状から、長年「船の体育館」とも呼ばれている。2014年9月末から耐震改修工事の入札不調により施設の利用が中止され、休館に至った。

7月23日の記者会見に登壇したのは、委員会委員長を務める建築家・長田慶太、副委員長の経営戦略コンサルタント・上杉昌史、理事の建築家・青木茂の3名。会見では、老朽化と耐震性の問題を理由に2023年に解体が決定された旧香川県立体育館について、民間主導による全額自己資金での保存・再生案が示された。
長田は、2014年の時点で耐震改修のための入札が中止され、以降長らく活用策が示されてこなかった経緯に触れたうえで、「2023年に発表された解体費用が約10億円に上ることを知り、この建築の文化的・歴史的価値を改めて認識した」と語った。

「仮に解体費用が3億円程度で済むのであれば、建物の運命として受け入れることもひとつの考え方だった。しかし10億円という金額は、むしろこの建築がいまだ文化資産としての役割を持ち得ることの証左ではないかと感じた」と述べ、保存の可能性を模索し始めた経緯を明かした。
そのうえで、耐震改修や再活用を県が主導するのではなく、民間主導による再生を目指すことが現実的で持続可能な選択肢であるとし、地元企業や有識者との協議を経て現在のチーム形成に至ったと説明した。