2026.2.26

「森アートアワード2026」初代グランプリに片山真理が選出

日本の中堅世代の現代アーティストを対象とする新たな表彰制度「森アートアワード2026」が始動。その初代グランプリに片山真理が選ばれた。

「森アートアワード2026」グランプリを受賞した片山真理
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 今年発足した「森アートアワード2026」のグランプリが発表され、⽚⼭真理が初代受賞者に選ばれた。

 本アワードは、日本の現代美術のアーティストのなかでも、とりわけ中堅作家が次のグローバルなステージへ羽ばたくことを支援するもの。授賞式は2月26日に都内で開催され、森現代芸術財団専務理事の森京子(森美術館理事長)および国際選考委員長の片岡真実(森美術館館長)が登壇し、本アワード創設の背景と選考の経緯を説明した。

 本アワードは2年に一度開催される。過去2年間に発表された展覧会や作品をもとに、財団が依頼した国内推薦委員がアーティストを推薦し、国際選考委員会による書類審査を経て4名のファイナリストを選出。その後、最終審査としてプレゼンテーションを実施し、1名の最優秀賞受賞者を決定する。グランプリ受賞者には賞金1000万円および森美術館での受賞記念展示の機会が提供されるほか、他の3名のファイナリストにもそれぞれ賞金100万円が授与される。

 2026年の国際選考委員会には、片岡真実のほか、ラーナ・デヴェンポート(南オーストラリア州立美術館元館長)、グレン・ラウリィ(ニューヨーク近代美術館名誉館長)、フランシス・モリス(テート・モダン元館長)、スハーニャ・ラフェル(M+館長)、ユージン・タン(ナショナル・ギャラリー・シンガポール館長)らが名を連ねた。国内推薦委員は、趙純恵、角奈緒子、木村絵理子、中村史子、徳山拓一、椿玲子の6名が務めている。

左から小泉明郎、山城知佳子、片岡真実、片山真理、森京子、目[mé]

 ファイナリストに選出されたのは、片山真理、⼩泉明郎、目[mé]、山城知佳子の4名。いずれも多様なメディアと主題を横断しながら、現代社会の諸課題に鋭く向き合う実践を展開してきた作家として評価されている。

 片岡は選考について、「本アワードは日本の中堅アーティストが国際的な飛躍を遂げることを支援するもの。個人的な問いであれ、地球規模の課題であれ、それぞれの関心をいかに広い世界へ接続できるかを重視した」と説明。そのうえで、ファイナリスト4名はいずれも「困難な時代においてアートが和解をもたらし得るという確信と、課題に向き合う勇気を共有していた」と総括した。

 グランプリに選ばれた片山真理は1987年生まれ。自身の身体を制作の核に据え、写真と手縫いによるオブジェを組み合わせた表現を展開してきた。身体を生きた彫刻であり、社会を映し出すレンズとして位置づけ、「自然」「人工」「正しさ」といった規範的価値観を問い直す作品を発表している。また、「選択の自由」を掲げた「ハイヒールプロジェクト」を通じ、義足用の特注ハイヒールを制作・着用しながら、歌手やモデル、講演活動など多方面で発信を続けてきた。これまでにテート・モダン「Performer and Participant」(2023)、ヨーロッパ写真美術館「home again」(2021)、第58回ヴェネチア・ビエンナーレ(2019)など、国際的な舞台で作品を発表してきた。

 選考理由について片岡は、とりわけ近作シリーズ「Tree of Life」を挙げ、「自己のポートレートから出発しながら、身体が自然の空間へと溶け込むような拡張を見せ、さらなる飛躍を予感させた」と評価。また、「片山にしか成し得ない力強いイメージメイキングと明確なコンセプチュアルな枠組みの融合が、文化的・社会的境界を越えていく可能性を示している」と述べ、国際的文脈における展開への期待を示した。

今回の選考について語る片岡真実

 授賞式で片山は、「この賞はたんなる受賞にとどまらず、メッセージを届ける機会をいただいたことに意味がある」と語った。制作の根底にある問いについては、「多様な役割を抱えながら、私たちはどう生きていけばよいのかを問い続けてきた」と振り返る。ビーズやパールを用いた手縫いのオブジェは触れると音を奏でるが、「その音は人の存在のエコーのようなもの。どのような存在も決して消えることはなく、私たちは決してひとりではないと信じられる」と述べ、「努力はきっと報われると伝えたい」と締めくくった。

 森現代芸術財団は、「キュレーター・レジデンス・プログラム」と本アワードを活動の2本柱とし、日本の現代美術を国際的に発信する新たな枠組みを構築している。森京子は「第1回受賞アーティストの門出をともに見守り、今後の活躍を応援してほしい」と呼びかけた。

 初開催となった森アートアワードは、日本の中堅世代に焦点を当て、国際的視座からその実践を評価する制度として始動した。片山真理の受賞は、その第一歩を象徴する出来事といえるだろう。