2025.8.7

森美術館が2026年度、ロン・ミュエクと森万里子の大規模個展を開催へ

森美術館が、スーパーリアルな人間彫刻で知られるロン・ミュエクと、国や文化超越して人々がつながる表現を模索してきた森万里子の大規模個展を2026年度にそれぞれ開催する。各展の会期は2026年4月29日〜9月23日と10月31日〜2027年3月28日。

ロン・ミュエク イン・ベッド 2005 ミクストメディア 162×650×395cm 所蔵=カルティエ現代美術財団 展示風景:「ロン・ミュエク」(韓国国立現代美術館ソウル館、2025) 撮影=ナム・キヨン 画像提供=カルティエ現代美術財団、韓国国立現代美術館
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 東京・六本木の森美術館が、2026年度に2本の大規模個展を開催。「ロン・ミュエク展」(2026年4月29日〜9月23日)と、「森万里子展」(2026年10月31日〜2027年3月28日)だ。

森万里子 トムナフーリ 2006 ガラス、ステンレス鋼、LED、リアルタイム制御システム 327.4×115.3×39.6cm 撮影=リチャード・リーロイド

 ロン・ミュエクは1958年オーストラリア・メルボルン生まれ、1986年より英国在住。映画・広告業界で20年以上働いた後、1990年代半ばに彫刻の制作を開始。1996年、ロンドンのヘイワード・ギャラリーで開催された展覧会で、ポルトガル人画家、パウラ・レゴの絵画とともに彫刻《ピノキオ》(1996)が展示され現代美術界にデビュー。翌年、他界した父親を小さく表現した《死んだ父》(1996-97)が、同地のロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで開催された「センセーション:サーチ・コレクションのヤング・ブリティッシュ・アーティスト」展に出品され注目を集める。以来、世界各地で個展を開催してきた。一作品を制作するために数ヶ月、時には数年を要することもあり、過去30年間に制作された作品総数は50点あまりしかない。

ゴーティエ・ドゥブロンド監督『チキン/マン』(2019-2025) ハイビジョン・ビデオ 13分

 ミュエクは人間を綿密に観察し、哲学的な思索を重ねて制作を続けてきた。その作品は洗練とともに孤独、か弱さ、不安、レジリエンスといった人間の内面的な感情や体験を巧みに表現している。実際の人物よりもはるかに大きく、あるいは小さくつくられるその彫刻は、スケールの相対性や人々の知覚を揺さり、人間の身体、そして存在そのものについて問いかける。

ロン・ミュエク 枝を持つ女 2009 ミクストメディア 170×183×120cm 所蔵=カルティエ現代美術財団 展示風景「ロン・ミュエク」(韓国国立現代美術館ソウル館、2025) 撮影=ナム・キヨン 画像提供=カルティエ現代美術財団、韓国国立現代美術館

 本展は、ミュエクとカルティエ現代美術財団と森美術館が共同主催するもので、2023年にパリの同財団で開催されたものが巡回するかたちとなる。日本では、08年に金沢21世紀美術館で回顧展が開催されて以来、2度目の個展。大型作品を中心に、初期の代表作から近作まで10点余りを展示。

 さらにフランスの写真家・映画監督のゴーティエ・ドゥブロンドによる作家のスタジオと制作作業を記録した貴重な写真作品と映像作品も併せて公開し、作家の制作を包括的に紹介する。

 森万里子は1967年東京生まれ、ニューヨーク、東京および宮古島在住。92年ロンドンのチェルシー・カレッジ・オブ・アート卒業後、93年ニューヨークのホイットニー美術館インディペンデント・スタディ・プログラム修了。97年ベネチア・ビエンナーレで優秀賞受賞、2014年にはロンドン芸術大学から名誉フェローが授与された。2005年のヴェネチア・ビエンナーレでは代表作《Wave UFO》(1999-2002)がを集め、以来世界各地の主要な美術館で個展を開催してきた。ニューヨーク近代美術館(MoMA)やソロモン・R・グッゲンハイム美術館、ロンドンのテート・モダンなど数多くの美術館に作品が収蔵されている。

森万里子 撮影=下村一喜

 森は、近未来的な世界観と日本のアニメ文化などを融合させたのち、日本の自然信仰、仏教といった古代思想や精神世界、さらには縄文、ケルトなどの古代文化へとその表現を拡張していった。また、量子論、宇宙物理学、神経物理学にも接点を求めて、第一線の科学者やエンジニアともコラボレーション。00年以降は没入型の空間体験を促す大型インスタレーションも制作している。仏教的な宇宙観を起点に、あらゆる物事の相互関連性を希求する「Oneness(万物の一体性)」を表現。10年には自然環境と人類のつながりを考えるパブリックアートを六大陸に恒久的に設置することを目指しファウ公益財団を設立。ブラジルと宮古島で実現している。

森万里子 エソテリック・コスモス:ピュア・ランド 1996-98 写真、ガラス、ステンレス 304.8×609.6×2.2cm

 本展は、02年に東京都現代美術館で開催された「森万里子 ピュアランド」展以来、国内では24年ぶりの美術館での個展となる。インタラクティブなインスタレーション、彫刻、ビデオ、写真、ドローイング、パフォーマンスなど30年以上にわたる実践から約80点の作品が一堂に会する大規模個展。初期から最新作まで、代表作が緩やかに時代を追って展示され、作品資料やアーカイブも初公開される予定だ。

森万里子 Wave UFO 1999-2002 脳波インターフェース、ビジョンドーム、プロジェクター、コンピュータシステム、グラスファイバー、テクノジェル®、アクリル、カーボンファイバー、アルミニウム、マグネシウム 528×1134×493cm 展示風景「森万里子:Wave UFO」(ブレゲンツ美術館、オーストリア、2003) 撮影=リチャード・リーロイド