2025.12.12

レンブラントの希少な動物画《Young Lion Resting》が競売へ。収益は野生ネコ科動物の保護団体に寄付

レンブラントによる希少な動物画《Young Lion Resting(休む若いライオン)》が、2026年2月にサザビーズで競売にかけられる。予想落札価格は1500万〜2000万ドルとなっており、収益は野生ネコ科動物の保護団体「Panthera」に寄付される予定だ。

レンブラント・ファン・レインの《Young Lion Resting》(1638〜42)
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世界にわずか6点のライオン素描

 レンブラント・ファン・レインが描いた希少な動物の素描《Young Lion Resting(休む若いライオン)》(1638〜42)が、2026年2月4日にニューヨークで開催されるサザビーズの「Masters Week」に出品される。

 1638〜42年頃に制作されたこの作品は、黒チョークと白チョークを用いて、若いライオンの構えや緊張感、そして生命力を精緻に描き出したものだ。現存するレンブラントのライオン素描はわずか6点しか確認されておらず、同じライオンを描いたと考えられる2点の素描は大英博物館が所蔵。さらにルーヴル美術館、ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館、アムステルダム国立美術館にそれぞれ1点ずつ、ライオン素描が収蔵されている。

 本作は20年以上にわたり、世界最大級のレンブラント個人コレクション「The Leiden Collection」に収められてきた。同コレクション創設者であり、野生ネコ科動物の保護団体「Panthera」を立ち上げたトーマス・S・カプラン博士が2005年に初めて購入したレンブラント作品でもあり、その後Panthera会長のジョン・エアーズが共同所有者となった。今回の出品は、作品に込めた思いを自然保護の支援へとつなげる意図によるものだ。

 カプラン博士は、「野生生物保護は、レンブラントを超える私の唯一の情熱であり、より多くの人々をこの活動に引き寄せたいと考えている。この崇高な素描を新たな居場所へ送り出す以上にふさわしい方法はないだろう。この傑作が今後、世界中の大型ネコ科動物保護に深い影響を与え続けること、そしてその影響がやがて作品の来歴と歴史の重要な一部となることを思うと、胸が熱くなる」とのコメントを寄せている。

「レンブラントは明らかにライオンに魅了されていた」

 サザビーズのオールドマスター部門責任者グレゴリー・ルビンスタインは、本作を「レンブラントの自然観察と精神性が融合した傑作」とし、数十年に一度市場に現れるかどうかという重要作と位置づける。とくに、ライオンの左前脚が二通りに描かれ、最適な姿勢を探るレンブラントの思考過程が見て取れる点は、制作の生々しい過程を伝えている。また白いチョークを用いることで立体感と生命力が画面に吹き込まれており、輝きを宿した目はレンブラントのライオンへの強い興味を如実に示していると語る。

レンブラント・ファン・レインの《Young Lion Resting》(1638〜42)

 先のカプラン博士も、「レンブラントは明らかにライオンに魅了されていた──当時ヨーロッパではめったに見られないエキゾチックな生き物である──そしてこの素描のように、ほとんどの芸術家が人間の被写体に与えることのできない、より大きく深い内面的な生命を、どういうわけか彼らに吹き込むことができたのだ」と、本作を高く評価する。

 作品は競売に先立ち、パリ、ニューヨーク、ロンドン、アブダビ、香港、リヤドで巡回展示。推定落札価格は1500万〜2000万ドル。美術史的な価値と社会的意義を兼ね備えた本作の出品が、どのような結果となるのか注目だ。

 なお、東京・上野の国立西洋美術館では2026年7月7日より、レンブラントのエッチング作品に焦点を当てる展覧会「版画家レンブラント 挑戦、継承、インパクト」が開催される。